完全に猫なのさ

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生と相対する〈嘘〉を見つめて―連続ドラマW「悪貨」感想(全5話/WOWOW、2014年)

みなさんこんばんは。ツアーファイナルからはや1か月、ワンマンショーが恋しいですね(遠い目)。日曜劇場!など色々と楽しみな情報も解禁されているけれど、そもそもミッチー出演の過去作をほとんど見たことがないため、少しずつ履修を進めていきたいと思います!ということで選んだのがこちら。

 

連続ドラマW 悪貨 DVD BOX

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WOWOW、2014年/視聴方法:Amazonプライムビデオ)

 

及川さんの役どころは、台湾在住の投資家で偽札組織の幹部、野々宮冬彦。W主演の黒木メイサさんが野々宮に接近する警視庁捜査二課の刑事・宮園エリカを演じました。

…異国情緒たっぷりの台湾を舞台に、気障なインテリヤクザ・冬彦が暗躍。そんな彼の上っ面を愛でようとしたものの、途中まではどうしても物語に入り込めずに難渋しました。実際、第3話あたりしんどくて鑑賞中のメモには「優勝は林遣都さんです!!!!おめでとうございます!」って書いてるわ(彼の名演については後述)。

けれども最後はこの世界観における「冬彦」というキャラクターを改めて見つめ直し、見送ることができました。

 

4年前のドラマですが念のため、以下ネタバレありの感想と冬彦中心の考察です。

なおベイベーの皆様におかれましては、アホほどスクロールして考察を飛ばして各話鑑賞中のベイベー的うわごとだけ読んでいただいてもぜんっぜん大丈夫です!!!ご来訪ありがとうございます。

 

★8月30日(金)にWOWOWで再放送があるようなので今だけ貼っておきます↓

www.cinefilwowow.com

 

 

 

ハニトラどうなのよ問題

これはね、もう筋書き上、2人が出会うには仕方ないのだけど、女性捜査官→潜入捜査→ハニトラというフォーマットに私はどうしても乗れなかった。フィクションとはいえ、現代の日本が舞台だからなぁ…。

2人は第3話であっさり一線を越えてしまいますが、エリカに対しては職務で寝るなよ。と身も蓋もない突っ込みを入れたくなった。

初対面で冬彦にかなり接近したエリカは、帰国後に「あの夜の続きを」という誘いに乗ることになり、潜入先の宝石店のバックヤードで「いよいよかぁ〜」と漏らす。でもそのセリフが「いよいよ黒幕に近づけるぞ」なのかこりゃいよいよ寝ることになっちゃうわ〜」なのか読み取れない。「どっちも正解」ということなんだろうけれど、正直、葛藤しているようには見えない。エリカのプロフェッショナリズムに疑問符がつき、またエリカにハニトラするよう仕向ける組織(=男社会)にも微妙な気持ちを抱くことになった。

なお上司の日笠(豊原功補)をはじめ、警察組織は「そこまでやれと言ってない」はず。当初の命令はマネーロンダリングが疑われる中華系宝石店への潜入だった。黒幕の冬彦が見えてきても、寝ろなんて命令していない。実際、後半でエリカは冬彦と親密になりすぎたことを理由に捜査から外される。

でも結局は、エリカが冬彦の懐に飛び込んだことでかなり情報を得て捜査が進展しているわけです。エリカが美人だからそういう役回りがあるのは明白で、だって同僚の地味な女性刑事は同じ潜入でも「夫の借金で困窮し疲弊した主婦」役で彼岸コミューンに潜入するじゃん。顔面で使い分けるなよぉ…(まあ逆なら絶対うまくいかないのはわかる…。主婦役、よくできてた…)。

とにかくエリカが冬彦と一線を越える展開については「冬彦に惹かれて自らそう望んだから」なのか「組織の言外の期待を汲み取って捜査のためにやった」なのかよくわからなかったです。もちろんエリカは冬彦を好きになっていたし「どっちも正解」なのでしょうけど(2回目)じゃあ!もっと葛藤を!!見せてくれよぉ…!!(2回目)

 

つかみにくかった冬彦の人物像

じゃあ冬彦さんにガッツリ感情移入するか。と思いきや、これがまた難しい!

冬彦は貧困に苦しめられた生い立ちから、貨幣経済絶対許さないマンになったわけです。けれども劇中ではその背景や過程がそこまでは掘り下げされておらず、途中まで共感を寄せるのが難しかった。

序盤はエリカや恩人・池尻(笹野高史に対して嘘を語る設定なので、いつまでたっても本当のことがわからないというのもありました。ユダヤ人富豪の養子とか大嘘もいいところやろ。

そして、池尻が代表を務める「彼岸コミューン」への多額の寄付が、実は偽札によるものだったと明かすくだり。当然ながら池尻はショックを受け、激しく拒絶する。狼狽する冬彦。

いや、なんで、引かれないと思った?

秘密を知った池尻を組織が生かしておくはずがなく、腹心の部下・鉄幹(阿部力心筋梗塞に見せかけて暗殺。激昂する冬彦。

いや、なんで、消されないと思った?

えっどうしよう、ミッチーが演じている人のことがよくわからないよ。

 

安宿が死ぬほど似合わないから、冬彦を「かわいそう」と思えた

ところが後半、物語が動く。ほぼ軟禁状態で偽札を刷らせていた印刷工・後藤(高橋克実を警察に奪還されて、冬彦は窮地に立たされる。挽回すべく帰国したものの、組織に口座を凍結され大ピンチ。港区の高級ホテルのスイートに泊まろうとしたのにブラックカードから何からぜんぶ止められていて、結局、日雇い労働者向けの安宿に。似合わない。安宿が死ぬほど似合わない。そのことで初めて、私は心の底から冬彦を「かわいそう」と思った。そう、冬彦は本来、孤独で「かわいそう」な人なのだ。これは「安宿が死ぬほど似合わない」及川光博さんのビジュアルの勝利ですね。その後も財布の残金を気にしながら逃避行を続けるのが切ない。貧困を憎み金融テロを画策した男が再び「お金がない」ことに翻弄される皮肉。冬彦は足掻き始めてからのほうが人間くさくて魅力的なのだ。

 

フクロウと後藤が際立たせてくれたもの

ここで素晴らしい脇役に触れておきたい!前述の印刷工・後藤(高橋克実と、偽札鑑定のエキスパート・フクロウ(林遣都です。

彼らは、高い技術を持っていながら倒産した印刷所の元社員と経営者の息子。フクロウは警察に協力するなかで後藤が偽札の紙幣番号に潜ませたメッセージに気づき、彼を救おうと台湾へ。警察の手も借りて2人が脱出を目指すシーンでは、「助かってほしい!冬彦に捕まらないでほしい!」と息の詰まる思いで見守った。不器用ながらも必死で生きようともがく後藤とフクロウは、このドラマにおける〈生〉の象徴なのだと思う。

では冬彦はその対比である〈死〉なのか?そうではないと、ここにきてわかった。虚飾にまみれ、人を信じられない冬彦は〈嘘〉そのものだったのではないかな。

「生きていれば、人は変われる。やり直せる」。最終話の終盤、後藤は面会室の窓越しに、憑き物が落ちたような表情でフクロウを諭す。その言葉を受け止めて、ぎこちなく笑おうとするフクロウ。やっと目に光が宿る。おふたり本当に名演でした。優勝です。

後藤とフクロウが泥にまみれながらも生きようとしたこと。2人が担った〈生〉のパートがしっかり立っていたからこそ、〈嘘〉を生きる冬彦というキャラクターが説得力を帯びた。掘り下げが弱かったり行動が不可解だったりしても彼そのものが〈嘘〉だからアリなんだと、キャラクターを強めてくれた気がします。

「でも生きてれば、やり直せる」。同じ最終話では、エリカも冬彦を自首させようと必死で呼びかけた。けれど同じ言葉が、冬彦には届かなかったわけです。切ないなぁ。

 

そして結末へ

鉄幹と冬彦を乗せたみすぼらしい小型船が、寒々しい冬の海に浮かんでいる。

死を覚悟した冬彦に、鉄幹が「私にはわかりません。一体あなたが何をしたいのか」と訴える。それな。と思わず同意する私。本人は「自分の甘さ」だと述懐していましたが…。

初対面からエリカが警察官だと見抜く慧眼をもちながら、恩人の池尻が消される運命に気づけず、さらには組織を裏切って自滅する。たしかに冬彦は、どこか破綻している。でも仕方ないと思える。これまでずっと、〈嘘〉そのものを生きてきたのだから。

錨と共に沈むべく鎖を巻きつけた冬彦に、鉄幹は自分のレザーコートを脱いで着せ掛ける。「寒さを感じる前に行ってください」。一瞬のバックハグ…!最後にご褒美ありがとうございますっ!!!!

 

目を閉じて暗い深海へ沈んでゆく冬彦はただただ美しかった。愛した女性・エリカの声が脳裏に蘇る…そこまではよかった。

 

最後に響いたエリカの台詞「いかないで!」で、冬彦は突如、刮目する。

 

え、ええっ?現世への執着が蘇ったってこと?まさかここから生き返るパターン?いや無理やろ。ここでフェードアウト。どうなったん!?

ちょっと、綺麗に逝かせてあげて!!!!!(怒)

 

冬彦が海上で鉄幹に託した手紙が、交通課に異動したエリカの元に届けられる。中身は、劇中に登場した“0ルピー紙幣”に、いつか一緒に行きたいと話していたヴェネツィアの絵葉書。「ヴェネツィアで待ってます。」

価値のない紙幣、絵空事の絵葉書とメッセージ。嘘を生きた冬彦は、死してなお、愛した人にきれいな嘘をつこうとしたのかな。と思う。

 

感想はここまででです。ご静聴ありがとうございました。

 

 

ベイベー的うわごと

第1話

  • そのツヤツヤのシルバーのスーツにネクタイを足してワンマンショーで着てほしい

第2話

  • ミッチー、エビ掴むの平気だったのかなぁ
  • あっ白ワイン飲んでる
  • キスシーン何回見たかは聞かないで下さい(ハニトラに散々文句言っておきながらメッチャ見ました)
  • VネックVネックVネック!!!!!!
  • シャツからダイヤモンドがちょい透け!


第3話

  • 喪服グラサンミッチー、絵面がつよい。いつもの黄色いやつじゃない(そりゃそうだ)
  • お姫様抱っこ力持ち!!!!!!!!! 
  • 手相見てあげる〜♪(棒)

 
第4話

  • (あわててパスワード入力するシーン)ぱそんこ…!タイピングが完全にフワフワ、ふだんPC使ってる人の打ち方じゃないね♡(超笑顔)
  • 予約の取れないお寿司食べに行こ〜♪(棒)

 

  • (バレていることを告げるセリフ「宮園エリカ刑事?」の呼びかけに対して)アーッそこは階級で呼んで!!!(巡査が巡査部長か知らんけど、出てきてないけど…)(これは警察小説オタの爆発)

 

  • オレンジ絞る指先いただきました!!!!!やった!!!!
  • 死ぬほど安宿似合わない、めちゃくちゃかわいそう
  • フクロウ…、後藤も…助かってほしい…幸せになってほしい…冬彦さんはたぶん死んじゃうだろうから…泣
  • せっかく警備会社に来たんだからゴーン会長みたいに変装して逃げればいいやん…と思ったけどベイベー的にはNGか。


第5話

  • この時点で何日お風呂入ってないんだろうミッチーもとい冬彦さんかわいそう
  • 冬彦さんをそろそろお風呂に入れたげて…(n回目)
  • レザーコート越しの阿部力の控えめなバッグハグ、ちょ、えも、、、
  • 筆跡鑑定発動。ヴェネツィアで待ってます。」は及川さん本人の筆跡ではないとみた(合ってますか?)

 

  • ミッチー、また死んだ。

 

そうなのです、ベイベーになってから見た映像作品、どういうわけか今のところミッチーの死亡率が100%なんです。こんど公開される「引っ越し大名!」で殿が討ち死にしたらどうしよう…(しません)。

 

hikkoshi-movie.jp