※6話(倒叙集1話)未視聴、5話を観た後のテンションで書いております!
いや〜〜〜
あっはっはっ…
騙されましたね(笑顔)。
完全に、してやられました。製作陣の手のひらの上でダンシンオールナイッ!!!
ということで完全に騙された上で、5話の感想に加えて、「5話まで見て原作を読んだ感想」を書きますね。
引用元はこちらの文庫版です。みんな買おうぜ!👍
※アフィとかじゃないよ
以下、すっっっごくネタバレです!!!ご注意あれ!
仕掛けがわかった上で原作を読んだ感想
これね、原作が先かドラマが先か、どっちがいいとかの話ではないと思うんですよ。
原作を読んでいたら「ドラマではこうアレンジするのね」と楽しめるし、
ドラマでびっくりした後に原作を読んだら「こんなふうに書いてあったのか〜!」と驚くわけです。
今回は忙しくて後者(ドラマ→原作)になってしまったんですが、個人的には、この読み方ができたのはとっても楽しい読書体験でした。
それでは聞いてください。
“信頼できない語り手”か〜〜〜い!!!!!!
原作は香月の目線で綴られていくので、完全に「お前!!!!!」ってなりましたよね。しかし、このレトリカルな仕掛けが、結末を知ってから読むと、たまらないわけです。これは「読了後に読み直す」のとほぼ同体験になるわけですが、初読からこのお楽しみを満喫しました。
(P.56)香月には、推理小説に描かれる名探偵のような推理力はない。(中略)たんに、犯罪者の心理に対しての洞察と描写に、多少の自信がある程度だった。
→そりゃね!自分が“そう”だからね!!
(P.81)(翡翠)「多少は、判別がつくとは思いますが……、(中略)人殺しの人とは、会うことなんてないですから」
なるほど、その判別にも、経験則が必要になってくるのだろう。
→つまり、この時点では自分が“匂い”によって人殺しとバレてはいないと踏んでいるわけです。なるほどじゃねえよ。
他にもたくさん、事情がわかって読むと意味が反転する記述がたくさんあってゾクゾクします。そして極めつけはこれ。P.342で「藤間菜月が殺害された前日」に連続殺人が起こっていることが語られるのですが、じつは本書のページを遡ると、“その日”の香月の行動はちゃんと作中に出てくるんですよね!
(P.267)正午には新しい企画の打ち合わせを兼ねた会食があり、午後には雑誌のインタビューを受けた。珍しくスケジュールが目白押しで、事件の捜査は警察に任せて、二日間、片づけるべき自分の仕事に集中していた。
この記述は“藤間菜月が殺害された日”の「19時」の時点のものなのですが、正午からのスケジュールをとうとうと語っているなかで、どう考えても見逃してしまうんだけど、さりげなく、めっちゃさりげなく、「二日間」って、はっきり書いてあるんですよね。えっこの前日、香月先生、何してたんですか?????
原作ではこのほか「インタールード」という短い章がちょっとずつ挟まれていて、そこで「鶴丘文樹」=ドラマでは逮捕時に明らかになった香月の本名、が犯行に及ぶ模様が描かれているのですが、これはドラマでも謎の人物が翡翠ちゃんの写真にナイフをつきたてたりする、似たような効果のカットが挟まれてきました。
ペンネームというものに思い至らなかったのが悔しいですが、鶴丘の風貌はインタールードに描かれていたなか、香月先生の風貌はさほど描写されてこなかったのがミソ。あのね〜原作の香月先生の顔面は絶対に瀬戸康史じゃないと思うの(disじゃないよ!)。瀬戸くんがあまりに素敵でドキドキさせるものだから、本当に二重に騙されましたよ、あたしゃ。
ドラマでの伏線を振り返る(※何も気づかなかった人が)
では、原作はこうやって叙述トリックでがっつり読者を騙してきたわけですが、ドラマのほうはどんなふうに視聴者を欺いてきたのか。いっぱいあると思うのですが、見返してみて目立つところをあげますね。まぁね、リアタイ中は1mmも気づかなかったんですけどね。
それはずばり、、
写真の数!!!
①1話で8枚ある
事件現場で香月と鐘場が「これで6人目ですか」「7人目だ」と言葉を交わしますが、被害者の写真がいかにも“謎を追う名探偵風”に壁に張り巡らされているやつ、1話の時点で8枚あります。
1話ラストのインタールード風カットで8人目が殺されていることがわかるので、香月先生の家の壁のやつは、追い越してるんですよね。*1
②4話で9枚ある
ドラマでは原作より1人多く、9人が犠牲になっています。これは原作にないほぼオリジナルパートとなった4話が関係するのですが(後述)、なんと、この4話の時点で写真が9枚に増えているんです。
現着した蛯名が「まずはご遺体の身元を洗わないと」と言っているので、4話の冒頭では9人目=誰なのかはわかっていないんです(警察が掴めてないのに部外者が顔写真で示せるはずがない)。一方、香月が鐘場に「すみません、これから会えませんか」と電話するシーンでは、ご丁寧に背景の写真が9枚見えるように撮られているんですね。めちゃくちゃフェアな演出やないかい。
で、このあと、鐘場と警察署の会議室で会うシーンで、鐘場は「前に渡したのは7人目までだったよな」と言います。つまり、「9人目」どころか「8人目」の写真が1話の時点で壁に飾られていることが、そもそもおかしいんです。
奇術とミステリーへのオマージュ
5話の見どころは、なんといっても、清原果耶さん演じる翡翠ちゃんの、痛快すぎる爆煽り、立て板に水の長台詞です。相沢先生もおっしゃってましたが、人間が操れる長さの台詞じゃないわ。
原作を読むと、ドラマでのセリフは、ちょっぴりというか、だいぶマイルドに調整されたのだなという印象です。いやもう十分、令和イチといっても過言ではないほどの煽り芸でしたけどね!!「頭脳キレキレの挑発」という言葉を具現化したら超絶かわいい城塚翡翠ちゃんになるんだよな。
原作では「ちゅーしてあげましょう」だったのが、ドラマ字幕では「チュ〜してあげましょう」でした。このシーン、小首をかしげてて可愛すぎ、天才。チューの表記については正直どっちも好きだわ。
あ〜翡翠ちゃんに「鈍いですね」の目で蔑まれたいわァ…。
この種明かしの部分、ドラマではカットされていましたが、原作では奇術用語がふんだんに用いられていることが興味深かったです。サトルティ、パーム、ホットリーディング…。知らない言葉だらけで、ふむふむと調べながら読みました。解説を読むまで存じ上げなかったのですが、原作の相沢先生はアマチュアマジシャンでいらっしゃるそう。
一方、映像の力が生かされたドラマならではの箇所は、やはりスカーフを取り出してみせるマジックのシーンだったと思います。スカーフの朱色が薄暗い別荘で抜群に映えて、ドラマチックな効果を上げていました。この、翡翠が何も握っていない左手からスカーフを取り出して見せる様子は、ごまかしの効かない正面からのワンカットで撮られています。つまり清原果耶さんが実際に手品を演じてみせたのですね。これぞクロースアップマジック!!
ミステリーへの言及もふんだんになされています。これは詳しい方が元ネタ(ネーミングなど)を解説されているブログ等が複数ありましたので、ぜひそちらを見ていただきたいのですが、やっぱりワクワクしたのはシャーロック・ホームズへの言及です。有名な一節が、ドラマ5話では日本語で、原作では英語で(※地の文にて説明)、翡翠により引用されています。ミステリー作家である香月に言ってきかせるあたり、挑発のレベルが高すぎるんよな。
カバーでも披露している、翡翠が五指をあわせたポーズもホームズを彷彿させるもの。原作の「社会不適合者」(P.416)は、これはシャーロック・ホームズの原文というよりはBBCのSHERLOCK…じゃないかな?(※大好き)。
なにより、驚異の力に見せかけて鋭い観察により論理的に相手の本質を見抜く、というやり口そのものが、シャーロック・ホームズすぎるんですよね…。
一番好きなのは、ドラマには出てこなかった、女子高生連続絞殺事件での以下のシーンです。
(P.230)「蛯名さん、もしかして今度ご結婚されるんですか?」
「あ、はい。そうですけど、指輪もしてないのに、よくわかりましたね」
「初歩的な推理です」
これは、自身が霊媒であることを“隠して”、「優秀な推理力を持つ香月のアシスタント」の“ふりをしている”、翡翠のセリフです。でも実はその逆で、翡翠はいつもどおりの推理をしてみせただけ。そして、「初歩的」というフレーズこそ、まさに、ホームズがワトソンによく語る言葉なんですよね!!!
エレメンタリィィィィィ!!!!!!!(興奮)
原作者が第4話の脚本を担当した、という重要性〜鐘場警部の見せ場に大感謝〜
さて、ベイベーとして最も書くべきパートに差し掛かりました。
原作の4話(最終話)にあたる「VSエリミネーター」は、ドラマでは4話と5話にまたがる形になっていました。4話の脚本は、原作にないパートを多く含むため、相沢沙呼先生自ら筆を取られています。
この4話が帯びていた最も重要な使命は、鐘場警部に疑いの目を向けさせるミスディレクションだったのではと思われます。
だって原作では鐘場警部が疑われる描写なんて全然出てこないんだもん!
そもそも、オリキャラの天子は、このミスディレクションのために生み出された側面もあるのでは?だって、「犯人は、警察関係者なのかもしれない」なんてねぇ?
天子に疑われた一番のポイントは現場に落ちていたタブレット菓子でしたが、そもそも、鐘場警部がフリスクバリボリマンであるという設定も、原作にはないものでした。
もしかしたら相沢先生、「分かりました、ミッチーを怪しくするんですね??」ってノリノリで執筆されたのではないですか?
ドラマにミッチーが出てきたら、怪しいと思え。
古来より伝わる言い伝えにぴったり当てはまる素晴らしい作劇でした!
「ミスディレクション」は「ミスリード」とも言われ、読者の注意をあらぬ方向に向け、疑いを逸らすために用いられますが、この「ミスディレクション」は、そもそも奇術用語でもあります。
もちろん、推理小説においてミスディレクションはよく使われるテクニックです。しかし、翡翠がスカーフを取り出すシーンがそうであったように、映像作品であるドラマは、マジックを“実演してみせる”力を持っています。
だから私は、4話における鐘場のさまざまな描写は、奇術におけるミスディレクションの文脈を意識して執筆されたものではないかと想像するのです。
さて、このことを意識して、改めて4話を振り返ってみましょう。つまりですね、
双眼鏡でのねっとりした監視も、
フリスクをフーフーして食べるアップショットも、
会議室に現れた眠り姫(シャツ姿)も、
「夜道には気をつけろよ」という思いやりも(※脅しと間違えてごめんね)
降霊部屋での翡翠ちゃんとの対峙も、
天子の口を押さえてのマジギレ壁ドンも、
すべて原作者・相沢先生が創りたもうた鐘場警部の見せ場ということなんです!!
圧倒的感謝!!!
ベイベーとして、こんなに嬉しいことはありません💖ありがとうございました!
ちなみに、もうひとりドラマで活躍の場を広げたのが、小芝風花さん演じる真ちゃんですね。1話から可愛い可愛いって観てたんだけど、5話で本当の姿が明かされてめっちゃカタルシスを感じました。よッ!キャンメイクトーキョー!(大向こう)(2回目)
クライマックスで、鐘場が駆けつける直前に颯爽と現れて香月を組み伏せるシーン、痛快でしたね。
軽率に沼りそう。
ラストシーンで真ちゃんがゴミ袋に放り込んでゆくプリンの空き容器が、ドラマでは100個以上では?というくらいに増殖していたのも好きなポイント。
常人には食べきれないであろう量を誇張して描くことで、翡翠というフィクショナルな存在を際立たせる効果が生まれています。
というわけで、他にもまだまだあるのですが、原作も読んでみて、改めて面白いと感じたことについて書いてみました。
まもなく伏線回収スペシャルのOAなので、楽しみに待ちたいと思います!一番楽しみなのは鐘場警部補の私服です。