完全に猫なのさ

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セイレーンみたいに(舞台が)呼ぶから/ミュージカル「ジェーン・エア」感想(2023年3月16日夜・東京芸術劇場プレイハウス)

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立見で観てきました!逆立ちしたいくらい良かったです!(立見だけに!!)

本当はもうちょっと深めたいけど、いろいろインプットする前に生(き)のまま箇条書きで失礼します!

 

※ミュージカル初心者の感想です。普段はミッチーさんのベイベーをやっております。

※原作未読/パンフレット*1各種劇評未読/個人の主観です!

 

 

歌声の源泉かけ流し

  • 会社を脱走して45分後、私は19世紀イギリスの荒野にいました。寒々とした木立を擁するシンプルなセット、木漏れ日のような照明。
  • 始まってすぐ、独特の展開のしかたに気が付きました。アンサンブルさんが入れ替わり立ち替わりジェーンの回想を語る、これは、コロス的なやつですね!??うわーすげー!!
  • ほとんど全員がずっと舞台にいて自分たちでどんどん場面転換していく感じ!
  • 舞台の奥のぐっと高いところにハの字に置かれたオンステージシート。その壁面にお衣装がそっとかけてあって、ヤングジェーンがそこで着替えさせてもらったりしながら、ストーリーがどんどん進んでいく。
  • ジェーン、ヘレン、ロチェスターはもちろんのこと、アンサンブルさん含めて全員おそろしく歌がうまい。歌いっぱなしの演目、舞台が常に美しい旋律に彩られていて、歌声の源泉かけ流し。
  • 1幕序盤、屋比久ヘレンの「♪赦し」萌音ジェーンの「♪自由こそ」で、どっちも泣いた。
  • とても少ないヘレンの出番。だからこそ、この短い交わりでジェーンに「すべて」を与えたのだという説得力が必要。屋比久さんの清冽な泉のような歌声が、それを確かに成し遂げていた。魂が洗われるようだった。
  • そして萌音ジェーンの「自由こそ」。小さな体躯から溢れ出る歌声に圧倒された。透明感と緊張感を兼ね備えた高音が、時にはコンサートチャイムの響きすらまとって、小編成オケのグロッケンと共鳴する。「♪山並み 荒波…」の日本語詞の韻律の美しさにもひれ伏しました。
  • 私は総合芸術に圧倒されて泣くことが多いんだけど、とにかく純粋に歌の力だけで泣いた。そうです申し遅れましたがこのミュージカルは全然踊らないやつです!*2
  • 1幕ラストの「♪セイレーン」、ジェーンとロチェスターと“女”が舞台に大きく離れて立ち、声量と情熱の大三角形を成していた→まさか本当の三角関係とは思わなかった。

 

演出その他の感想

  • 初心者ゆえこれが初観劇なのですが…。ジョンケアード氏の天才ぶりを思い知ることになりました。
  • 1幕で、本物の火を灯した燭台を手に、大きな身振り手振りで舞台を歩き回るキャストたち。「こんなに火を使うの?」と、見ていて怖いくらいだったのだけど(実際小火のシーンもあったのだが)、このリアルな火を多用する緊張感が、実は2幕のストーリーの導線になっていたなんて。
  • 結構長い間お墓が出しっぱなしになっている→メメント・モリをかんじる。
  • ロチェスターの独白で拠り所になっている日時計→庭のシンボルであり、移ろいゆく時の象徴でもあるのかな。
  • アデールがトイザらスで買ってもらったドレスがかわいい(19世紀イングランドトイザらスはない)。
  • シャンソンのシーンは客席に背を向けて歌う珍しい演出、ジェーンの疎外感を表しているのかな*3
  • イングラム嬢、突然の不動産鑑定士
  • あんなにも悲痛なヒロインの花嫁姿がかつてあったか(しかも長いんよ)
  • ロチェスターと結ばれてもどうせ死に別れちゃうんでしょ!と予防線はりまくってたら100年ぶりに舞台にヘレンが出てきたのでこれはクライマックス!?もしかして希望のあるエンドなの!?ってなりました(←2幕引き込まれすぎて、時間の経過はわからなくなっております)
  • メモ:キリスト教的な、wash away (one's) sinsという概念をちょっと考えてみよう*4

 

芳雄さんの生歌を約1か月半ぶりに浴びてどうなったか

  • 打撃を受けた、打撃を受けたんだ、ジェーン…!!
  • 1/30博多座ぶりに井上芳雄さんの生歌を浴びました。こうなりました↑
  • ヴィクトリア朝のクラシカルなお衣装が終始着崩れているロチェスター氏の色気よ…。
  • 察しの悪い私でもジプシー女には「おや?」と思いました!お嬢ちゃんお嬢ちゃん〜!!エリザから2作連続、声音を変えて扮装していて途中でバーン!って正体を表す役を観た。声帯どうなってんの。
  • クライマックスシーン。こわごわと我が子を抱き、ほとんど驚愕に近い、この世の奇跡を目の当たりにするようなロチェスターの表情、とりわけその頬が涙に濡れていることに胸を撃ち抜かれた。顔を傾けるたびに、泣き濡れた頬がきらりと光る。それこそがこの舞台でロチェスターを生きた人の真実なのだと思った。
  • このラストシーンは明確に宗教画が意識されていたと思うのだけど、そこにはミセス・フェアファックスとアデールもそっと寄り添っていて、二重に感動的でした。聖家族の拡張というか、家族の本質は血の繋がりだけではないというメッセージなのかなと。

 

多幸感溢れるカーテンコール

  • いったん幕が下りて…とかもない、そのままいったん奥に下がってみんなで出てくる、物語と地続きのカーテンコール。オンステージシートに向けての特別なお辞儀も印象的でした。
  • 充実した表情で、手を繋いで拍手に応える少数精鋭のカンパニー。
  • タイトルロールを演じきった萌音氏。若く溌剌とした、そして愛嬌さえ感じさせる足取りにやっと「萌音ちゃん」を感じた。すごいよ萌音ちゃん…!
  • 3回目、激アツのスタオベでした。私は最初から立っていましたが心で立ちました(どうやって)
  • 芳雄さん、最後両手ガッツポーズでロッキーみたいだったのなんで?あと一番最後、萌音ちゃんと上手に仲良く履けながら遠くを指差してたの何?魂の旅?

 

立見という体験〜情熱のやつめ

  • 一夜明けた昨日。立見の疲れと戦いながら労働しました…!観られて満足なのですが、けっこうなかなか、体力的にはタフな体験でした!観たい!という情熱のなせる技。情熱のやつめ!
  • B4?くらいの紙で立ち位置が示してあり、その上に立って壁に寄りかかって観る。ロチェスター氏の姿は、じつはけっこう消失しておりました(頭の影で舞台の1/3くらいが欠ける)
  • ソワレを観るなら、ランチには定食とかをしっかり食べておくことをおすすめします!パワー!*5
  • ただ!とにかく「思ったより近い」!
  • 見切れはあるものの劇場のサイズ感とか構造のおかげで、2階の一番後ろなのに疎外感もなく十分よく見えました。お値段考えたらすごい!あと劇場の雰囲気の良さを丸ごと感じられる位置だと思う!

 

客席からオンステージシートを“見た”印象

  • 完全に「見た」だけの印象ですが、オンステージシートに配置された人々はコロスの延長なのだと思い、個人的にはとても納得感がありました。ジェーンの人生を見つめるという大切な役を担っているのだと思います。
  • かといって妙に気になることもなく、舞台装置にしっくりと溶け込んで、特に2幕では激動の展開ゆえ存在をほぼ意識しませんでした。
  • 回想シーンでそっと佇み、成り行きを見守っているジェーン。舞台と客席で「見守ること」の入れ子構造があって、オンステージシートはその象徴なのだと思いました。
  • 私が遠くからみた限りですが黒っぽいというか真っ黒の方が多かったように見えました。袖から出ている手の肌色が際立つくらい、とにかく全体が黒く見えていて、ドレスコードがとても効いていました。
  • いいなぁ、私もあの一員になりたいなぁ、結構見切れがあるというけれど、あの特別な深いお辞儀を捧げられるなら…。1回でいいから座ってみたいなぁ…。
  • いいなぁ…。
  • ………。

 

   ↓

 

  • そこに座ることにしました!(今日)
  • まるでセイレーンみたいに(舞台が)呼ぶから!!!行ってきます!

 

 

 

*1:ナンバー名の確認くらいしかできてない!早く読みたい!

*2:私の感受性として、本来はこの中にかなりダンスの割合がある。あと「人を楽しませよう」という極みに触れたときも泣く。だから、全然踊らないミュージカルで自分がこんなに満足したのが新鮮でうれしかった

*3:私の立ち位置からはちょうどジェーンが消えてしまったので次に表情を確認したい

*4:天使にラブソングを2」のOh Happy Daysで覚えたイディオム。

*5:個人的な体験ですが、よく寝て体調のいい日だったにもかかわらず、じつは1幕後半、感じたことのない気分の悪さに襲われて、貧血だったのかな〜と。ランチも軽めだったのがよくなかった。休憩20分、ロビーで座って意識的に休憩したので2幕は大丈夫でした。本業の推し活(ミッチーさんワンマンショー)ではトークとバラード以外立ちっぱなしで爆踊りしてるんですが、やはり訳が違いました