完全に猫なのさ

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「ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル」感想〜こってり特濃!チーム・エレファントに愛を込めて(2024年6月20日夜【初日】・帝国劇場/井上芳雄・平原綾香ほか)

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やっぱり今年も17時に退社している場合じゃありませんでした。

が、前々から部署に宣言しておいて机の上を散らかしまくりで本当に17時に会社をまろびでて、転がり込んだ地下鉄で日比谷までなんとか運ばれて、初日を迎えることができました!友達が来てくれてさらにハッピー。

私は去年大量にMR!の感想を書き残しており(末尾参照)、今年は何か書くことってあるのかな?と思っていました。が、初日からあったので、大急ぎで半額の弁当を買って帰り、とるものもとりあえずPCに向かっている次第です。

 

 

こってり特濃!チーム・エレファントの現在地

1幕を観終えた時点での私の感想は「チーム・エレファント、濃ゆいわ!!!」でした😂

濃厚&重厚にグレードアップ!(ジドラー/橋本さとし

  • さとっさん、初手からエグい。1階席のお客さんを次々に一本釣りしつつ、2階席のハートもがっちり掴んで離しません(当方、2階席のピーナツ&ラガー組でした)。「みんな大好き!ハロルド・ジドラー!」の説得力よ…。
  • 最初の見せ場であるオープニングナンバー「Welcome to the Moulin Rouge」では、しびれるような間を作って、客席を見渡して満足気にウンウンと頷いてから「できるCAN CAN CAN!!!」になだれ込みます。
  • アドリブも飛び出して、ピッチソングの「ケツを出せェェ!」でクリスチャンにお尻を出させたあとの「ファイヤー!」って、何!??
  • ちなみに「2、3キロシュッとした」のくだりでは、囲み取材の記事でその逆(=グレードアップ)だと知っていた観客から笑いが漏れました。笑

 

えっサティーンのことめっちゃ好きじゃん!?(デューク/K)

  • 昨年の時点での私のK公爵の印象といえば、「お金が大好き!!!」でした(そこが好きなポイントだった)。振り返った瞬間に「この公爵めっちゃお金好きやろ」って瞬時に理解(わか)らされるの、なんでだろ??
  • でも今日の初日に触れて新鮮にびっくりしたたのは、「えっもしかして、公爵ってサティーンのことめっちゃ好きじゃん!?」という印象。もちろん初演時からあった要素のはずですが、今日は特に、セリフや仕草の端々から(わかりにくいけど)サティーンを慈しむ気持ちが感じられて、違う世界の住人であるサティーンのことを、彼なりに真剣(マジ)に愛していたんだな、と思いました。だからこそ許せないという気持ちもあるわけですよね…。

 

太陽のように生き、月に還るように死ぬ(サティーン/平原綾香

  • チーム・エレファントのこってり成分の大半を生み出しているのは、間違いなくあーやサティーン。
  • 1幕のコケティッシュ仕草が昨年比でマシマシになっていて、勘違いをもとに会話が進む1幕のエレファントルームでのやり取りは、一挙手一投足に笑いが起きてしまうほど(膝パッカーンなど)。
  • あーやサティーンで大好きなポイントの1つ、「ママの仕事ぶりをみてて!にゃ〜ん🐱」のネコチャンは、今夜はすごくドスが効いていたのでたぶんサバンナにいるヒョウか何かだったと思います。
  • 1幕ではギラギラと濃密に輝き、ときにはコミカルなほど大げさなあーやサティーン。だからこそ、抑制のきいた終幕付近の演技が生きていて、悲劇性を高める効果があると感じます。
  • チームエレファントのパートナーである芳雄クリスチャンとは、たぶん心のうちに秘める「愛」の種類が近いような気がしている。

 

他のキャストについては書ききれませんでしたが(全員最高だったよ!)、まとめると、1幕ではニヤニヤしてしまうくらいこってり濃厚だったけれど、2幕は静謐さが印象的で、「とにかく光が強くて影も濃い」というのが、2024年初日のチーム・エレファントへの感想になりました。

 

2023年からの変更点(気付いたことだけ)

たぶん振り付けや歌の譜割りでも細かくあるのだと思うけど、私が気づけたことだけメモしておきます。

1幕

  • ピッチソングの後に、しれ〜っと部屋に残り続けるクリスチャンの体の向きがセンター側に変わった(汗も拭いていなかった)
  • ELMでのサティーン→クリスチャンのミラーリング、1個目は両手の頬杖で変わらなかったけど、2個目は脚を組むのではなく腕を使ったポーズに変わった(アドリブかもしれないけど!)→追記:その後6/22昼も観劇して、あーやのアドリブだったとわかりました😂

 

2幕

  • 「Backstage Romance」の後のニニとサンティアゴの会話、ニニの「バーカ!」が「ブタ!」になってた…!すんごいびっくりした。
  • 最も大きいと思われるのが、「Crazy Rolling」冒頭のクリスチャンの立ち位置の変更です。昨年は上手端に座ると消えスチャン確定だったのですが、今年はセンター寄りに調整されていたのではないでしょうか。そりゃあ、センター奥より上手奥にへたりこんでいるほうが、絶望感は強く伝わると思うけれど、見えなかったら意味ないもんね。今のところ見切れがあったのかは知ることはできないけれど、ミザンスの調整、大歓迎です!
  • クライマックス直前のジドラーの大好きな台詞、「サティーン、口紅、もう少し…」が、「サティーン、ルージュ、もう少し…」に変わった…!これはタイトル回収的な効果も狙ったものなのかなぁ?
  • フィナーレのジドラー&全員による「♪愛が何なの、何なの、ねぇ?」の譜割り、前は「♪あーいがー、なんなのー」だったのだけど、今夜は「♪あいがー、なんなのー」になっていた。前のほうがスウィングが効いてジャジーな感じだったけど、今回は日本語としての「愛」がはっきり伝えられる感じです。

 

「若さ」から「青さ」へ〜芳雄クリスチャンの進化

私は芳雄クリスチャンのダンスが大好きで、『Welcome to the Moulin Rouge』の中の「Burning Down the House」のパートでガチ泣きしていました。なんなら橋本ジドラーが「ボヘミアァァァンズ!!」って呼び込んだ時点でもう泣いてました。\ばーにんっ👏/\ばーにんっ👏/

そんな芳雄クリスチャンは昨年より1歳年を取っているはずなのですが(それはそう)、今年もピュアで溌剌とした青年像が健在でした。しかも、その表現はさらに進化していたように思います。以下、ナンバーごとにメモしてみます。

 

朴訥に届ける“精いっぱいの愛”〜Your Song

  • 歌い出しが明らかに変わっていました!「♪稼ぎもないのに…夢見てる…」と、1つひとつの言葉を噛みしめるように、たどたどしさすら感じるくらいの、おっとりとしたリズム感で。
  • 外国からやってきたイノセントな青年として朴訥と愛を語りかけることで、次に控える「♪せ〜〜〜〜〜いっぱいの〜〜うたを〜」の威力が増す仕掛けでした。そりゃサティーンもびっくりしてへたりこんじゃうわ。
  • ティーンの歌声を迎え入れるとき、下ハモリにスライドしてメゾピアノに声量を調整しながら新鮮にびっくりしてみせる演技、今年も大好きです。
  • えっとね、あとね、その後のチューがめっちゃ長かったです。

 

可愛くてかっこいい〜ELM

  • ELMでは可愛さが大爆発!愛の力で怖いもの知らずとなった芳雄クリスチャンが、あくまでもニコニコと、大型犬のようにあーやサティーンを追い回します。
  • かと思いきや…私の愛してやまないダンスブレイクでは目をすがめた爆イケフェイスで踊られたので今年も助かりませんでした。
  • あーやサティーン✕芳雄クリスチャンのラブ大爆発が本当に大好き。特に2023年8月24日のELMが今でも忘れられないのですが、今宵のあーやはラストでも規定のポーズを守っていました。笑(たぶん今年も楽くらいになるとクリスチャンの首にしがみついちゃうのではと思う)

 

幼稚と成熟のアンバランス〜Crazy Rolling

  • 最もアプローチの変化を感じたのがこの曲。昨年は回を追うごとに、いわゆる「闇落ち」の度合いが深くなっていたのが印象的でしたが、今夜感じたのは「独りよがり」と「幼稚さ」でした。脂の乗りきった44歳が“若さ”を表現するにあたって、こっちの苦しいほうに舵を切ったのだと…。
  • 一方で、銃に弾を込めながらの「♪出わなければ…よかったのにと…」の歌いぶりには井上芳雄のキャリア”にふさわしい本物の成熟がありました。この幼稚と成熟のアンバランスには、言いようのないゾクゾク感がありました。
  • この流れで迎える劇中劇、「僕の心は壊れそうだ」のぶっきらぼうな言い方は、あきらかに「お前のせいだ」と、なじるようなトーンでした。ここにも視野の狭さ、幼稚さがありありと感じられました。
  • だからこそ、「僕を見て…」の涙声で、観客の涙腺はみなごろしにされてしまうのです…。

 

虫の息のサティーンを抱きしめて、血濡れのハンカチで初めて事態を把握する芳雄クリスチャン。ここまでの演技の積み重ねにより、そりゃあ、サティーンの病に気づけるはずもないよね。と痛いほどの説得力がありました。

Come What Mayの前に語り合うとき、クリスチャンは夢想とはいえ「僕たちの子供」なんてあっさり言ってしまうけれど、ティーンの仕事とか、年齢差とか、女性が子供を生むことに関するあれこれも、なーんにもわかってないんだろうな。って、昨年さんざん観ておきながら、今夜初めて思いました。芳雄クリスチャンのアプローチが「若さ」から「青さ」へ移り変わったからなのかもしれません。

 

なお、芳雄さんの生歌を初めて聴いた友達は「歌が上手いのは知ってたけど、演技がうまくてびっくりした」と言ってくれました。嬉しすぎて地下鉄の中で「ありがとう」を連発してしまった。*1

 

初日という祭り

ほころびさえも愛おしい

初日の雰囲気は、わかってはいたけれど、それはもう凄かったです。

食い気味の歓声、沸き起こる拍手、演者の歌い出しのタイミングを飲み込んでしまうほどの興奮…。それが良い悪いではなくて、初日ならではの特別な雰囲気を味わえたことを、とても嬉しく思いました。1幕も2幕も、オープニングナンバー開けのショーストップは半端じゃなくて、2幕のBackstage Romanceの後なんて上野ロートレックがメモ帳を突き上げても(本来はこれが合図)、余計に拍手が盛り上がってしまう始末!

ほころび的な面ではまぁまぁあって、オケと歌の入りのタイミングが少しガチャついていたのは初日の御愛嬌かなと思います。あと技術面では、1幕のピッチソングで芳雄クリスチャンの「最後に誰か死ぬべき?」でマイクが入ってなくて*2、2幕ではロートレックの幕の上手側がうまく降りなかったりしました。でもそんなほころびさえも愛おしい、祝祭感にあふれる初日でした。

 

初日カーテンコールより

スタオベでキャストを迎えた初日カテコ挨拶では、「自称“世界最年長クリスチャン”」である芳雄さんが「多分、クリスチャンとして迎える最後の初日」とはっきり口にしていました。そうだよね、わかってた…。

それでもお決まりの「えぇ〜」という声に応えて、「大変なことになりますよ!?」と慌ててみせつつ「記録を更新するぞぉ〜!✊」と意気込み。

 

芳雄さんも「でも本当に一期一会ですから」とその場をまとめていましたが、私も、あくまでも、今夏が最後のつもりで見届けたいと思います。

 

Crazy Rollingの歌い出しの緊密なブレス。

ティーンを喪ったクリスチャンの、オフマイクの嗚咽。

いつまでもシャンデリアの下を舞い続けるハートの紙吹雪。

 

私はこういうものを、絶対に忘れたくないのです。

 

真っ赤なライトに照らされて、私たちボヘミアンズの夏は始まったばかり。

悔いのないように、いっしょに駆け抜けていきたいと思います。

明日はチーム・ウィンドミルの初日!ぶちかましてください!

 

 

 

▼去年の感想・考察はこちら▼

 

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*1:初見の友達と感想を語り合うのは、たくさん新しい示唆をもらってとても有益でした!「もし病気がなければサティーンはどういう選択をしたのか」とか、すごく考えさせられた

*2:これまさかと思うけど音響の演出の変更だったりします…フラグ的な意味で…??あと、この少し前の「♪お買い上げっ」のハバネラのフレーズの1回目の冒頭、芳雄クリスチャンが入りそびれたように聞こえたけどこれももしかしたらマイクのせいかもです。でも2回目では圧巻の声楽科ムーブをかましてくれたよ!たまらん!