2回目のムーラン・ルージュは、素晴らしいお席で観ることができました。ありがとうナビザ…!
体験として特別すぎましたし、あーやサティーンを筆頭に、初見のとき(7/6夜)とはたくさんキャストが変わっていて、ワクワクしました。
少しずつ解像度を上げながら、自分なりに味わっていきたいと思います。1回目に書ききれなかった歌の感想なども。
※ミュージカル初心者の感想です。間違いがありましたらご容赦ください。
※私のファン歴は2023年1月の博多座〜です。
1回目の感想はこちら(たくさんアクセスいただきありがとうございます)
A列が別世界すぎた件
振り返れば象がいる…。
この公演におけるA列は最前列ではありません。普段はオケピになることが多いXA〜XC列が存在するからです。しかし、A列、しかもほぼぼセンターで浴びる「ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル」は、体験としての情報量が異次元でした。
プレショーで禁断のひとときを過ごす
- まずプレショーからすごい。遠くで観ていたときとは比べ物にならないくらい、その…刺激が!刺激が強かったです!(精一杯のオブラート)
- 紳士たちと目を合わせながら、駆け引きする踊り子たち。あと少しで口づけられそうなところ、ふわりと身を翻して、イヤリングがちょっと揺れる。そういう機微までつぶさに見ることができました。客席とは少し違った時間が流れるプレショーは、ノンバーバルだからこそ饒舌です。
- 前方席にいると、舞台からはきっとどこを見ているかバレてしまっていてそれがすごく恥ずかしいくらいにエロティック(←ガン見していますとも)。しかもキャストさん、けだるそうに客席へ視線を向けながら、ちょっと目を合わせたりしてきますね?わーん!ごめんなさい!(でも見る)
- 剣を飲むパフォーマンスは自分も息ができなくなります。あの瞬間「どえらいところに来てしまった」って思うし、腹を決めなきゃいけないのです。
- ここにムーラン・ルージュというナイトクラブが本当に存在し、いまからあなたたちはそのお客になるんですよ、よろしいか。という準備のために、プレショーって絶対に必要だと改めて思いました。
息つく間もなく浴びせかけられるエンタメ
- 私は3月にミュージカル「ジェーン・エア」にハマった人間で、その感想で「歌声の源泉かけ流し」と書いたことがあるのですが、ジェーン・エアが清冽な泉なら、ムーラン・ルージュはエンタメの瀑布です。めくるめくきらめきと怒涛の音圧を、A列でざっぱんざっぱん浴びせられ続けました。手加減??そんなものはモンマルトルの丘には存在しない。
- 前回の観劇でチェックしていた、天井の垂れ幕がどの席のエリアまで降りているか。やはり、A列は含まれていました!そんな空間で橋本ジドラーと相対するスリルと興奮。私にもうずらの卵いただけますか〜!!
- 骨盤に響く重低音、風が届きそうなカンカンのスカートさばき。そして頭上に降り注ぎ、実際に手に取ることのできる紙吹雪。S席っていろいろあるけど…これは流石に、臨場感や没入感が違いすぎると思いました。
井上芳雄のフォルテシモに溺れる
- まじで芳雄クリスチャンが目の前にずっとおる…(それはそう)
- 「Welcome to the Moulin Rouge」の最後、ボヘミアンズとして集団の中で若さと情熱をほとばしらせて歌い踊る姿をほぼ正面から観て、ずっともう口元を抑えて涙目で見ていました。
- 「♪丘を〜越えて〜このサウンドオブミュージーーック」、あんな舞台の奥で歌っているのに的を完璧に撃ち抜いて、そりゃあトゥールーズもサンティアゴも声を揃えて「天才だ!」って言いますよね。説得力しかないのよ。
- 「Truth Beauty Freedom Love」の「♪We are young〜」の歌い上げを0ズレで浴びて、その圧で背中が背もたれにめり込みました。
- 「Your Song」の「♪せーーーーいっぱいのー愛を〜〜」のとき、体の中から本当に愛情が湧き上がってこぼれるのが見えました。
- 今あらためて考えたい、井上芳雄の空間塗りつぶし力。歌声が減衰しない、物理の法則にも縛られない、それっていったいどういうことなの。
プリンシパルキャスト+Lady Msの印象(7/18夜、敬称略、パンフ順)
★のキャストは2回目なので、前の記事にも書いています(Lady Ms除く)
平原綾香(サティーン)
- チャーミングでグラマラス、生まれついてのDIVA!それでいて、コケティッシュな仕草や身のこなしによって彼女の“仕事”が行間でしっかりと語られます。これってけっこう大事なこと!(にゃ〜ん🐱、可愛すぎ…!)
- たぶん自然にやっているのだろうけれど、歌いながら首のアイソレを入れるのがなんだか本場っぽいしセクシーです*1。
- サティーンとしてそこにいるけれど、最初から平原綾香の持ち歌だったかのようにナチュラルかつ洒脱に歌いこなす。だから「Elephant Love Medley」が歌姫としては最高に見せ場!
- 終盤は本当に具合が悪そうで…。私は下手にいる芳雄さんを目で追っていたはずなのに、上手の端のカーテンに隠れて咳をする姿をそっとうかがってしまいました。だって、心配で。今にも本当に死んじゃいそうで。
橋本さとし(ジドラー)★
- 1回目の観劇で完全に橋本ジドラーの虜になったので、もうワックワクで待ち構えていました。下品なお客さんとしてこき下ろされるほどテンションUP!!
- 特にカテコ、表情ひとつで観客を煽り倒してしまう力、なんなのでしょう?客席にあの顔を「ん?」って見せてくるだけで\ヒュー!!/って声が出ます(お客さんも盛り上がってて最高でした)
- 「これは愛の物語」…と、少し未来のクリスチャンが客席に語りかけるとき、センターから上手のクリスチャンを見つめるジドラーの切なげな表情にハッとして、そうか、この時制でのジドラーはすべてを知っているんだ。ということに鼻の奥がツンとなりました(今書いていて泣きそう)。
上川一哉(トゥールーズ=ロートレック)
- 葛藤を抱えながらもたぶん根は陽キャで、ひょうきんな一面もあるのか、表情がくるくる変わって魅力的!
- だからこそ泣いてしまう、サティーンとの実質の別れになるあの会話で、頬が震えるほどに嗚咽をこらえている姿のギャップに。
K(デューク[モンロス公爵])
- ははぁ〜〜なるほど…
- この公爵は!!!間違いなくお金が好き!!(登場して0.1秒の感想)(だからそう歌ってるじゃん)
- カルティエに誘うだけでこんなにもやらしい(褒めてます)。ヒールとしての苦味、エグみが小気味よくて、だからこそ後半、もしかしてうっかり純愛なのでは?と思わされてドキドキしました。
- 特にあーやサティーンとの歌声の絡み合いが好相性だと感じました(互いに押し合う感じ)。
- そしてカテコでは武装解除してはつらつと踊るんだから、ギャップがやばいよ…(どちらにしろカテコのデュークは危険だと学びました)。
中河内雅貴(サンティアゴ)
- ねえ!
- 声がでかい!!!!
- サウンドオブミュージックのところからその声量とスピード感にひっくり返りそうになりました。こんなの、コンドルは(びっくりして)飛んでいく。
- キレよくシャープな存在感を放ち、楓ニニとの間でピン!と張り合う緊張の糸が見えるかのようでした。
加賀楓(ニニ)★
- やはり、可愛いので目で追ってしまいますね…。口元を結んでほんの少しだけツンと顎を上げた姿が印象的で、タバコをふかしても、はすっぱになりすぎない佇まい。
- 「Backstage Romance」は、中河内サンティアゴとの組み合わせもまた絶品。(ダンスで鳴らしたメンバーだったとはいえ)アイドルとは全くジャンルが違うのに、アクロバティックなペアダンスに順応できるのがすごすぎます。
菅谷真理恵(ラ・ショコラ)
- びっくりしたのが、「Backstage Romance」の後、上手の後ろに下がった芳雄クリスチャンと会話をしているお芝居です。2人とも雰囲気が自然体で、どっちだったか、親しげに軽く背中に手をやるような仕草もあり、ラ・ショコラってフレンドリーで気取らない人なんだろうなぁと思いました。
- この、登場人物の関係性に基づく小さなお芝居はステージ上のそこかしこに存在し、それがクオリティを確かなものにしているはずなのですが、この組み合わせにも、あんなにすみっこだったのに目が吸い寄せられてしまったのでした*2。
MARIA-E(アラビア)
- ゴージャスなボディ×明るい笑顔の組み合わせが、大輪のお花みたいに華やかでした!
- Lady Marmaladeの歌い出しの迫力、すごく鍵になっているはず。それでいてエレガントなのも好き!
大音智海(ベイビードール)
- 7/6に続き2回目の大音ベイビードール。彼女自身がベイビードールであることに誇りをもち、それを全力で楽しんでいることが伝わってきます。思わずエンパワメントされてしまう!
- YouTubeの楽しみ方講座、とてもありがたかったです!
これは愛の物語〜2幕の芳雄クリスチャンを中心に
初見のとき、ストーリーが超シンプルである、という印象をもったのだけれど、シンプルだからこそ奥が深い「愛」の描き方について、2回目のほうがさらに深い感動を得ることができました。愛のもつ側面に対して、1幕では高揚と輝きに、2幕では苦悩と狂気に焦点を当てており、その陰影の変化は、2幕途中でクリスチャンの衣装がダークな革のジャケットに変わることでも記号的に表されています。以下、芳雄クリスチャンの歌唱を中心にひもといてみたいと思います。
Roxanne〜Crazy Rolling
「Roxanne」では若さゆえに余裕を失った姿を見せながらも、歌声の中には40代ならではの深みのある成分もひそかに感じられて、それが混沌や奥行きにつながっているように思いました。後半、舞台の奥にまっすぐ下がっていく(※書き間違えてました、向きが逆だった)鬼気迫る表情は、さらに眼球の色合いまでもが変わったかのよう。*3
さらに魅力を感じたのが「Crazy Rolling」です。初回の観劇(上手壁)では途中まで視界にクリスチャンがまったく存在しなかったので、特に楽しみにしていました*4。私はこの曲ではボーカルのリズム感がポイントだと思っていて、芳雄クリスチャンは4ビートにタイトに沿わせる歌い方がとてもうまいと感じます。シンコペーションに続く3拍目の16分音符の、重たさを残しつつも軽やかな処理。歌のリズムが緩かったら、あの緊迫感はぜったいに実現し得ないと思うのです。
Your Song(リプライズ)
そうして、ついに舞台上で“マリー”と“フランソワ”として再会する2人。「マリー。」という呼び掛けにゾワッと鳥肌がたちました。人格がぜんぶ入れ替わってしまったみたいで、前観たときとは違うアプローチのような気がしました。「僕を見て。」なんて、あと一歩でサイコパスです。私、初見のときは「愛する人がこんなに具合が悪いのに、何で気づかないの?」と思わなくもなかったのですが、この日の観劇で、今のクリスチャンには絶対に無理ということが痛いほど分かりました。
涙を流して歯を食いしばって自らに銃口を向ける芳雄クリスチャンに、「♪自慢していいんだよ…」と歌いかけるあーやサティーン。手をのべて、まるで子守唄を歌って宥めるかのようなその姿に、サティーンはクリスチャンを死なせまいとして、命を振り絞って歌っているのだと思いました。成熟した大人である彼女は、死後の世界でいっしょに幸せになろうというロミジュリ的な選択はせず、クリスチャンに生きていてほしかったのだと…。
Finale(Come What May)
マイクを通さずに聞こえてくる、芳雄クリスチャンの静かな嗚咽、鼻を啜り上げる音。
荘厳なCome What Mayの合唱から、昇天を暗示する美しい光の演出を目の当たりにしたとき、サティーンの魂は救われて、幸せになれたのだとはっきり思えました。
そしてLady Msがきゅっと口角を上げたのを合図に、再びかっこよく始まる「Lady Marmalade」のアイコニックなイントロ。そうか、これは輪廻なんだ。赤い風車の羽根がめぐるように、いつかまたこのムーラン・ルージュで2人は出会う(のかもしれない)。悲しみの中に希望がキラリと示唆される、味わい深いエンディングだと改めて思いました。
愛の価値を知る人が、愛を歌うということ
最後に、ちょっとだけ踏み込んだ感想を。
冬のエリザベート、春のジェーン・エアを経て、ある思いが確信に変わりました。それは、「井上芳雄という人は愛の力を信じている」ということ。根拠なんてないしインスピレーションとしかいいようがないのだけど…。
チケット代と引き換えにエンタメを届けてくれている演者に対して、その人間性まで推し量ろうとすることはよくないことなのかもしれません*5。でも、彼が役柄として“愛ゆえ”の感動や絶望に涙しながら歌うたび、経験値や才能、技量だけでは語れない輝きをどうしてもそこに見出してしまうのです。
絶命したサティーンを膝に抱き、涙声で歌うクリスチャン。きっと間違いなく、井上芳雄は愛の価値を知っている…そのことに、また別の感動を覚えた観劇体験になりました。
*
タイトルに掲げた話題に戻ってまとめます。A列、すごかった、夢の世界でした。紙吹雪を少しだけ拾って持ち帰れて、ムーラン・ルージュは本当にあったんだ!という気持ちです。
そしてマチソワだったというこの日のお二人!ソワレでもその疲れなんて感じなかったけれど、過酷な1日のとある場面をTwitterで知ることになりました。あーやのツイートお借りしますね🫰
応援ありがとうでした!
— A-ya(Ayaka Hirahara)平原綾香NEWアルバム発売中 (@AyakaHirahara1) 2023年7月18日
マチソワどうなるかな?と思いましたが
とても楽しくて
今からもう1公演したいくらいです!
あーやはマチソワが全部で3回!何故
本日も、とにかくすごい熱気でした。
エレベーターの中で芳雄が
「あちゅい・・・」って言ってました。
いや、そんなキャラだっけ?カワイイか笑 pic.twitter.com/IxQnlVMJwc
あちゅい…。
そしてふたりともかわいい…。
次回は、仕事で本初日を手放して以来の念願の2階・B席から!1回入魂で楽しみ尽くしたいと思います👏