完全に猫なのさ

とあるスターと、いろんなエンタメについて書くブログ I'm here for you.

「祝・日比谷野音 100 周年 日比谷ブロードウェイ with WOWOW 芳雄のミュー【日比谷のミュー】」レポ〜夜空の下で心を通わせて(2023年10月22日・日比谷野外音楽堂)

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たのしかった〜!

配信もありましたし、セトリも公表されていて、このあと放送もあるので、記憶にはまったくリソースを割かずにシンプルに満喫してきました*1。現地での雑感としてサラッと書きます!

 

 

開場まで

習い事を終えて急いでグッズの購入へ。15時過ぎに霞ヶ関駅につき、日比谷公園方面のB2出口を目指します。

通路を進んでいくと少しずつ聞こえてくる、音漏れ特有のズン…ズン…という低音。

わぁ、こんなに聴こえるんだ。今は何の曲のリハかな…?

 

 

 

 

あっ…もしかしてこの曲は………!!!! よりによってあの曲では…!?

(階段を登り始める)

豪華メンバーだったよね、誰がどのパートを歌うんだろう…?

(さらに階段を登って地上へ)

 

 

芳「♪そばに〜いてやろう〜〜」

 

 

階段を転げ落ちるかと思いました。

 

開演まで

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ゲートの前。

カフェで時間を潰し、ほどよいタイミングで入場。同じ秋空の下なのに、野音のエリアに入ると澄んだ緊張感があって気分が高まります。

木のベンチにグッズのレジャークッションを広げて座ってみると良い感じ。尻への課金は正解だった…!

よりによって今日から気温が下がる予報で寒さだけは心配だったのですが、お客さんに挟まれてほどよい熱気を感じ、少しも寒くないわ。

 

開演少し前にビルの背後から上弦の月が姿を現し、夕空に流れる絹雲がほんのひとときだけピンクに染まりました。

さあ、いよいよ開演です!

 

ちなみに、発表されたセットリストは以下の通り(ただし演奏されなかった曲あり)

 

本編!(抜粋)

※休憩なし。以下のパート分けは、勝手な名付けです!

開幕〜ソロパート

  • 「Falling Slowly」であたたかいムードを広げながら、メンバー登場!芳雄さん、黒のハイネックに薄いブルーのセットアップ!ジャケットもパンツも裾がフレアでかわいい。
  • 紹介や挨拶のあと、芳雄さんと甲斐翔真くんがステージに残り、ムーラン・ルージュ!の記憶もまだ新しい「Shut Up and Dance」へ。甲斐くんは仕立てのよさそうなグレーのロングコートを颯爽と羽織ってステージ映えしまくりです。
  • しかも歌の前、ティーンの真似で手をスッと伸ばして「Shat up…and dance with me(キリッ)」とやってみせるというお茶目さ(なお、歌い終わった後にその話になり芳雄さんの肩にダイレクトに触れてもう1回やってた😂翔真サティー爆誕
  • ここでスタンディングのサジェストがあって、楽しく体を動かせました*2。これは劇中でもウズウズしちゃうダンスナンバーだったのでうれしい!サビに簡単なステップの振りがつけられていたのも印象的で、2人がジャケットとコートの裾をなびかせて踊る姿がたまりません。
  • この後はソロ(orデュエット)のパートへ。トップバッターの甲斐くんは袖に向かう芳雄さんの背中を心細げに見つめて「自分ひとりで大丈夫かな…」というような呟き。それを受けて芳雄さんが一言返そうとしたら既にPA操作がされていて「マイク切れてるわ」(←オフマイク)。正面に向き直った甲斐くん、井上芳雄さんのマイクが切れてるの初めて見た…」
  • イタリア歌曲の「Volare」は、むか〜し発泡酒のCMで耳に馴染んだ曲でしたよね。歌いながら上手から登場した田代万里生さん…イタリアの貴族だった。シュガーさん共々、美声と圧が本物すぎた…。
  • 特に感銘を受けた曲その①「星から降る金」。私は「モーツァルト!」は未履修なのですが(ベートーヴェン前には円盤を買うつもり)、バイマイで1回だけ聴いたことがあり、なんて美しい曲なんだろうと思っていました。そして今日、澄んだ夜空の下で島田歌穂さんの歌唱に耳を傾けていると、意味とか理由を超えて、静かに涙が湧き出てきました。
  • その②は(記事ではセトリ順が前後しますが)Bohemian Rhapsody。これ、まさに先日ボストン・ポップス・オーケストラのコンサートで聴いたもので、そのとき芳雄さんが日本でこれを歌えるのは中川晃教さんくらいだ、と言っていたのですが(詳しくはレポにて)、本当に衝撃的でした。冒頭の歌い出し、どう見てもアッキーさんはステージに1人しかいないのに、まさに多重録音のような不思議な聴きごこちがありました。これはシンセサイザーの効果もあると思うけど、それにしてもびっくりした。
  • アッキーさん、シャイン・ショウ!の「楓」でも思ったけど、どうも他の人にはないイリュージョンみがある気がするんですよね…芳雄さんはどんなに遠くても「めちゃくちゃ届く!圧がすごい!」って思うけど、アッキーさんは「は??なんか本体が近くに来てない??」って思う。なんだろうこれ、もっと聴いてみたいな〜。
  • 「世界が終わる夜のように」は甲斐くんと屋比久ちゃんのデュエットでした。見つめ合って歌う2人の身長差に萌えました。
  • 夕暮れ時に始まったコンサートもあっという間に闇に包まれ、客席で色とりどりのペンライトがきれいに光っていました。*3

 

エリザベートパート

  • いよいよ固唾をのんで迎えたエリザベートからの2曲。闇広は事前に解禁されていましたが「夜のボート」は今回配られたセトリで明らかになったもので、私は誰が歌うのかちゃんと見ていませんでした。
  • 赤いドレスに黒いショールをプラスしてシシィの心情を歌う歌穂さん、深みがあって素晴らしかった…。そこへ万里生さんとシュガーさん、2人のフランツが両サイドから切なく語りかけ、夜空の下、愛とパートナーシップの悲しみが切々と染みてきます…。
  • と、そこへ、終盤になって階段の上に現れた芳雄さん。は???何????
  • 大混乱したのですが、歌声はフランツのパートに合流していました。たぶんトート閣下の顔で。私の情緒は終了しました。
  • そしていよいよ、甲斐くん・万里生さん・シュガーさん…と芳雄トートの「闇が広がる」へ。私はあんまりコンサートでオペラグラスを使わなくて、今回もたまに片手で持ってスッと覗くくらいだったのですが、ここにきてオペラグラス両手持ちでかぶりつき。
  • 1/30の博多座で芳雄トートに謁見できたことは本当に幸運でしたが、それで沼落ちしてしまった私は、「エリザベートを芳雄さんのファンとして観る」ことは叶っていません(そりゃあそう*4)。その念願が、半分くらい目の前で叶った気がしてめちゃくちゃ感激しました。
  • 3人のルドルフをまとめて立ち上がらせる芳雄トートの支配力。ほんとに9割オペラグラスだったのでステージングの全貌があんまりわかっていないのですが(シュガーさんは「がまん〜できな〜い!」「王座〜!」だけというのはその後のトークで把握した笑)、WOWOWでの放映を楽しみにしたいと思います🙏

 

芳雄のミュー&日比谷音楽祭パート

  • 亀田誠治さんをお迎えして、番組テーマソング「芳雄のミュー」。本当に楽しいナンバーで、あっという間に終わってしまうのが惜しくて、2番もあったらいいのになって思うくらいです(1分08秒しかないそうです。観覧レポ参照)。
  • 久しぶりにスタンディングのサジェストがあり、芳雄さんとシュガーさん、アッキーさんで銀河鉄道999。キラキラの名曲で、これまた夜空の下で聴くには最高な曲だし、体も動いてとても楽しかった!あと私、転がしに足を乗っけてる芳雄さん初めて見ました。かっこよすぎか。足長すぎか。
  • 先日のうたコンでの披露も素晴らしかった「雨が止んだら」桜井和寿さんが紡いだ美しい三拍子のメロディにうっとりします。Aメロの「それともこの傘をステッキにして踊る?」にあわせて、碓井菜央さん、宮河愛一郎さん *5といっしょに踊るやさしいステップが本当に好き(特に最後の足が上がるところ)。芳雄さんの衣装のフレアな裾がとてもよく合っていて、もしかしたらこの曲を中心に据えて選ばれたのかも?と思うくらいでした。
  • メンバー紹介では音楽監督の大貫祐一郎さんにひときわ大きな声援が送られて、芳雄さんが「ヒュ〜!とかやめてもらっていいですか」と観客を制する流れ😂私は初めて生の大貫さんを見られて興奮していたので多めに見てほしい😂
  • アンコールは「シャイニング・スター」。“東京の空には星が見えないかもしれないけどお客さんみんなが輝いているよ!”というトークを組み立てようとしていた芳雄さんに、万里生さんが夜空を指さして「ある!ある!」と星の発見を報告。芳雄さんは「見つけんじゃねえよ!」と全力でツッコミ笑。
  • 1人ずつセンターの芳雄さんと別れを交わしてはけてゆく演出に、じんわりと余韻を感じました*6

 

 

感想など

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万里生さんが指さしていたのは、木星でした。

 

そういうわけで、月や星もちらりと顔を出した東京の夜空の下、少しも寒くなく、体が縮こまることもなく、快適に楽しんで帰路につくことができました。セットリストも、タイトルに「夜」や「星」といった言葉を含む曲やシュガーさんの「時が来た」など(最高だった)、コンサートの意味やシチュエーションに重ねた選曲が素敵だったなぁと思います。

日比谷音楽祭についても芳雄さんや亀田さんの思いをじかに聴くことができ、まさに「人のつながり」が編み上げたプレシャスなステージなのだと思いました。私はミュージカル経験値低めですが、芳雄さんに出会ってこの1年弱に観たり聴いたりしたもののおかげで、「半分くらいはわかる」感じで楽しめました(もちろんまったくわからなくても楽しいと思うのですが)。これも、芳雄さんが地図を広げてくれたおかげです。

 

エンディングの1人ずつの挨拶で、甲斐翔真くんが「今日はゆっくりお風呂に浸かって、体をほぐして寝てくださいね」と言ってくれたのが心に残っていて*7、こうやって私たちは日常と非日常を往還しながらエンタメを楽しんでいくのだろうなと思います。

今日の思い出をまた11月の放送で反芻できるのを楽しみにしたいと思います。WOWOWさん、ぜひノーカットでお願いしますね…!あとミューのゲストに万里生さんを早く呼んであげて…ッ!

 

 

 

*1:この界隈の話ではないですが、私はこれまでワンマンショーのセトリとトーク内容を記憶して持ち帰ることに死ぬほど労力を使っていて、それってどうなんだろうと今日改めて思いました。うう。。。

*2:超コンパクトにリズムを取っております。こういうのが思うようにできるようになりたくてダンス習ってるところもあります。まだまだだけど、満足!

*3:ところで私、ライブについては育った界隈が特殊すぎて(トークとバラード以外ぜんぶ踊ってる)、ペンライトを振るタイプの現場は初体験。グッズのサイリウムを素人なりに楽しく振ってみたんですけど、客席を見ていると、色が変えられるペンライトだとデスノートで赤くしたりウィキッドで緑にしたりできるんだな!と察して、いいな〜私もやりたい!!🥺と思いました

*4:日比谷音楽祭のときは、どうしても闇広が見たくてU-NEXTに課金した

*5:お二人のダンスは傘の透明感とも響き合ってとても素敵でした

*6:歌穂さんの手の甲にキスする流れにキュンとしました

*7:非日常から日常へ優しくつなぐトーク、素晴らしいと思った。「お家に帰るまでが〇〇です」の進化系だよ!

ボストン・ポップス on Tour 2023レポ〜「君はともだち」と思えた夜(10月10日サントリーホール・ゲストヴォーカル:井上芳雄)

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心から楽しみにしていたボストン・ポップス・コンサートに行ってきました!

憧れのサントリーホールで大好きな曲が聴ける!しかもそれを叶えてくれるのが井上芳雄さん。夢のようです。

そんなわけで粗々ですが感想を書き残しておきたいと思います。

 

※書いている人→ミュージカル経験値低め、ファン歴1年未満、演奏経験チョットアリマス🎹🎷

 

 

プログラム

*出典:公式ホームページ&配布プログラム

*🎤マークは井上芳雄さん歌唱曲

公式には表記がありませんが便宜上、第1部、第2部と表記します

 

第1部

 

第2部

 

レポ(抜粋)

開演まで

出演情報を聞いてまず飛びついたのが、歌唱曲の1つ「雨に唄えば」でした。私はもうほとんど雨に唄えば芸人なんじゃないかなって思っているんですけど、本当に大好きな映画で、ミュージカル(来日公演)も昨年観に行くことができて、それが芳雄さんの歌で聴けるのなら万難を排して駆けつけなければ、と思ったのです。

そして予め明らかになっていたプログラム。あえて部活を引き合いに出しますが、これはあれです、吹奏楽部の定演の第二部のドリームチームです。演奏したことや聴いたことがある人気曲がてんこ盛りで、これを一流のオーケストラで聴けるなんて!というのも楽しみなポイントでした。

連休明けというのにそそくさと17時半退社を決め、初めてのサントリーホールへ。いつまでもおのぼりさんが抜けない私ですが、今回も着席してきらびやかな視界にびっくりです、テレビか???(2階)。オケのメンバーがもうそこにいて音出しを初めています。女性もけっこういますね。大編成にうれしくなってつい数えてしまう…コントラバス6台!チェロ8挺!!ヴァイオリンとヴィオラすごくいっぱい!!!!!

コンマスの女性が立ち上がりチューニング開始。そしていよいよ、マエストロ・キース・ロックハートの登場です👏

 

第1部〜「自慢の息子」の面目躍如

*以下、発言内容の紹介は意訳、特に英語部分はニュアンスです。

正装の似合う男・井上芳雄

「ハリウッド万歳」サウンド・オブ・ミュージック』序曲を華やかに披露して、マエストロが日本語の挨拶を披露しました。

「我々は20年ぶりに日本に戻って演奏できるのを楽しみにしていました」

その後は英語で、すごくアバウトな意訳ですけれどこんな感じで。

「すごく歴史のあるオケです!映画やミュージカルのいろんな名曲をシェアするよ!歌いたくなったらどうぞ歌っちゃってください😉(=Please do)

再び日本語での「有名な俳優で歌手でもある井上芳雄さんを拍手でお迎えください」という紹介*1に促され、待ってました!とばかりに手を叩く我々。

下手からハンドマイクを片手に現れた芳雄さんは、深いワインレッドのタキシードに黒の蝶ネクタイとベスト、細身のパンツ姿。ブラックタイというのかな、シックな正装がとてもお似合いでした。コールハウス役の短髪をラフにアレンジしたヘアスタイルもおしゃれで、なんかこう、オケを背負って立っているだけでカッコよさが振り切れてます(※まだ歌ってない)(※まだ喋ってない)

 

光も差し込む「雨に唄えば

エストロと笑顔で挨拶を交わし、すぐに1曲目の雨に唄えばへ…!微笑んでゆったりとスウィングしながら英語で歌う芳雄さん。この柔らかくバウンスするようなスウィングの雰囲気が、指揮を振るマエストロとなんだか似ていて、アイコンタクトの感じもそうですが、もしかして波長が近い人どうしのかなという第一印象をもちました(ものすごく雑なのを承知で言うとお二人とも陽キャなのではと思った)

映画の中のジーン・ケリーやミュージカルでのアダム・クーパーと比べると、多幸感あふれる芳雄さんの「雨に唄えば」は、分厚い雲や土砂降りの影は感じさせず、雨とともに明るい光も差し込んでいるような天気模様。そこへ指揮台の奥から現れた真っ赤な傘。受け取った芳雄さんは楽しげに傘を開いて(ジャンプ傘でよかった笑)、なんなら指揮台に足をかけてデュエットに誘います。サントリーホールには背後にも席があるのですが、傘を差したら芳雄さんが見えないだろうなと思いきや、くるりとターンして後方にもアピールするので流石です。

曲の終わりは、原作では水たまりを蹴り散らかして大暴れしてたジーン・ケリーがポリスメンに見咎められて口笛を吹いてごまかすシーン😗なのですが、それをマエストロと2人で目を見合わせて再現していたのが心憎かったです。聴きたかった曲が聴けて本当に嬉しい…!最後のスキャットまでたっぷり堪能しました。

 

エストロのひとこと・その1「Sing alongください」

「星よ」では、日本語での歌唱(以降、最後の曲以外は日本語)。言葉がまっすぐ入ってきて、あっ、ミュージカルの芳雄さんだなって思う時間でした*2。拍手に送られて芳雄さんはいったん退出。

吹奏楽でもおなじみの「マンボ」を経て(マンボ!って一緒に言いたくなる)、マエストロ・キースがくるりと振り返って言うことには「Sing alongください。」…でも始まったのはボヘミアン・ラプソディなのですよ。これ難易度高くないですか?ごめんマエストロ、私、ママーしか分からんから事故ってしまう…と心の中でフランクに謝って聴くのに集中しました。笑(でも少し歌声も聞こえてきましたね!)

 

エストロのひとこと・その2「ディズニー。」

再び振り返ったマエストロ、マイクを握って一言、「ディズニー。」

日本語?アレ?日本語じゃないけどカタカナで言ってくれた?なんか、伝えようという気持ちが嬉しかったです。そんなわけで美女と野獣です。美しい旋律、とりわけ繊細なヴァイオリンにうっとりして涙が出ます*3。そうそう、マエストロ・キースは指揮棒を使わないのですね!両手で布を広げるような振りも印象的です。その布はきっとカラフルで美しいんだろうなと思ったり。

 

芳雄さんのひとこと「ちょっと喋ります。」

再登場し「ちょっと喋ります。」と前置きする芳雄さん、ちょっと…じゃないことをなんとなく察している客席。アットホーム感がすごい。

「あんなかっこいい『ディズニー』って聞いたことないですよね。」

ボヘミアンラプソディ…みなさん歌えました?歌ってくださいって言われてなかなかいきなり歌える歌でもないと思いますけど、日本だと中川晃教くんくらいじゃないかと…(キースの方を向いて )イッツジャパニーズジョーク」

と、マエストロの言葉にからめて短く軽快に笑いを取り、次の曲の紹介へ。

「僕も大好きな曲で、歌う前にいつも言うんですけど、この曲は、今はそうじゃないんだけど、いつの日か(あなたの)自慢の息子になりたいって歌なんです」

「でも僕は元々ほぼほぼ自慢の息子💪

 

みなさん見てください、説得力が蝶ネクタイつけて喋ってます!

 

「今日は両親も来てくれてますので、もっと自慢の息子になりたいと思います!!」

 

そうして始まった「自慢の息子」…深さと透明感をあわせもつ歌声で空気を一変させ、至福の世界に誘います。とても愛情を感じる歌でした。こんな超ド級の親孝行、この世にあるかいな…。

次の曲「君はともだち」では一転、語りかけるように、力の抜けた洒脱な歌い方で。タイトルどおりフレンドリーなムードを広げます。「ともだち」の歌詞に合わせてオーケストラのメンバーを見渡す姿が心に残りました。

 

第2部〜ジョン・ウィリアムズの魔法

新作ミュージカルのオーディション!?

オペラ座の怪人の後に再び日本語で呼び込まれた芳雄さん。「このオケでオペラ座の怪人を)全幕聴きたくなりましたよね!?」には完全同意です。「憧れのオーケストラだったので呼んでいただけて嬉しい」というようなことを年越しコンサートを聴きに行った思い出を交えて語り、オケを振り返りながら「みなさんと顔を合わせたのが今朝で、アメリカのスタッフの方がずらーっと(客席に)いて…新作ミュージカルのオーディションかなって」、ここで爆沸きする客席。芳雄さんはマエストロにもちゃんと、なんでお客さんがウケているのか「Talking about this morning」と一言添えていて抜かりなかったです。そして感激を伝える一言も。「ミュージカルをやっている人間として、オーケストラでポップスを演奏することの真髄に触れさせていたたき、すごく興奮しています」

 

多彩な歌声〜翳りと祈り

「初めて歌うんですけど」と紹介されたサンセット大通り。私は初めて聴いたのですが、変拍子の複雑な曲調に驚かされました。そして、ここで急に我に返る私。このお方は、あのスケジュールで一体いつ譜面をさらって歌い込んだのだろう…??

陰りと迫力のある歌唱を終えると、フルートによるおなじみのイントロを合図にスッと表情を変えて「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」へ。遠くどこまでも伸びてゆくビブラートは祈りそのもの。映画のストーリーに重ねあわせて、ただただ聴き惚れるひとときでした。マエストロと熱い握手を交わしたあと、芳雄さんはここでステージを後にします。

 

十八番ってこういうこと

さて、オーケストラの演奏について、私が一番感銘を受けたのは終盤です。2曲続けて演奏されたジョン・ウィリアムズの名曲ハリー・ポッターと賢者の石(ヘドウィグのテーマ)」「E.T.(フライング・テーマ)」が圧巻のクオリティでした。打楽器と金管がキレッキレで、演奏が全体的に緊密で、これが、かつてジョン・ウィリアムズが振っていたオケなんだ…と!納得感しかありませんでした。十八番ってこういうこと…!

ハリー・ポッターでは、ステージ奥のグランドピアノ横に置かれたシンセサイザー(鍵盤部分は見えず)によってあの有名なイントロが演奏されるや否や、魔法の世界へ🪄人間が本当に弾けるのかなっていうストリングスの高速パッセージがまさに目の前で披露されます。E.T.では壮大なテーマが鳴り渡ったとき、本当に雲の上に飛んでいくような疾走感にクラクラしました。ハープ綺麗だった…。どちらも〈不思議〉を内包する映画だったこともあり、生で聴いたことによるインパクトがすごかったです。これらは本当に聴けてよかったと思いました。

 

エンディング〜アンコール

このあと英語で挨拶がありました。「今日ここで演奏できて、とても感謝している、このような素晴らしい観客と時間を共にできて光栄です」というような内容かと思います、雰囲気でなんとなく伝わりました(違ったらすみません)。そして、おそらく最後の曲となる「42nd street」の紹介だったと思うのですが「special arrangement」と言っていて、実際、めちゃくちゃカッコいいアレンジで演奏が始まりました。手拍子も起こって大盛り上がり。

拍手に応えて始まったアンコール。プログラムに記載がないので、「知らない曲かもな…」と少し心細く思っていたところ、誰もが知るトランペットのテーマ🎺が冴え冴えと響き、「レイダース・マーチ」であると判明。このときの客席の「おぉ…!」というどよめき、楽しかったですね。ジョン・ウィリアムズ御大の名曲、この演奏がまた、小気味よくて素晴らしかったのですよ!(アンコールながら、私としてはベスト3に入れたいです*4

さらに鳴り止まない拍手に応えて(カテコ的に)芳雄さんも一緒に登場してくれました。マエストロと両手でがっちり握手を交わして、コンマスさんにも握手を求めて退場したあと、オケもはけ始めたところで改めて2人で拍手をしながら一緒に出てきてくれて、スタオベ&みんなでヒューヒュー!!*5親密な空気にあふれた終演となりました。

 

 

名門のコンサートホールというよそゆきの場所でちょっぴり緊張していたなか、芳雄さんが出てきたときは、外国で知っている人に出会えたような安堵感がありました。そうしていつものように笑わせてもらったり、演奏に聴き入っているうちに、ボストン・ポップスとその音楽ともいつの間にか「ともだち」になれたような気がします🎼

芳雄さんのおかげで、一流の演奏を肩肘張らずに楽しむという稀有な経験ができました。サントリーホールに連れてきてくれてありがとう!!

 

https://x.com/bp_japantour/status/171175004074

 

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追伸(?):会場で、手が滑って「裏切らない芳雄4時間スペシャル」の円盤を買いました*6

 

 

*1:順番はどっちだったかな、「有名な歌手で俳優でもある」だったかな…?

*2:レミゼは未履修なのですが…

*3:個人的に中学校の完全下校の音楽だったこともあり一層ノスタルジックな気分に…楽器を片付けて帰らなきゃ

*4:演り慣れてるのは当然として、日本に来てからも別日の公演ですでにやっているみたい。中盤、あれ?ホールの聞こえ方のせいかな…タイミングが…と思った場面も実はあったのだけど、ジョン・ウィリアムズを演奏し始めてから嘘のように締まったので多分気のせいではなかった。リハ回数って大事ですね

*5:私はムーラン・ルージュ以降、わりと吹っ切れてヒューヒュー言えるようになっちゃったんですけど(芳雄さんが煽ったら)、もしかして他の人もそうだったりする??

*6:来春のバイマイコンに向けて冬くらいに買うつもりだったけど、ポストカードに釣られて今買ってしまった…

ミュージカル「ラグタイム」感想〜私たちを運んでゆく音楽の力(動機とリズムを中心に)

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ミュージカル「ラグタイム」、東京公演に続いて大阪公演もいよいよ千秋楽、おめでとうございます!

本記事では、東京での観劇*1をベースに、たくさんのナンバーの中から抜粋して音楽の魅力について書いていきたいと思います。ティーブン・フラハティ*2の紡ぐ名曲の数々に私はとにかく夢中になっていて、ここ2週間はずっとシンコペーション、3拍子、動機と主題…などについて一生懸命考えていました。

抜粋とはいえ長いので、下記の目次から特に好きな曲を拾い読みしていただくか、“Ragtime”と“New Music”だけでも読んでいただけるとサラの居場所がわかったときのコールハウスばりに喜びます!

 

※ミュージカル初心者の感想です。楽典の知識は怪しいので(勉強しながら書きました)、薄目で読んでください。

 

初日の感想はこちら(今思えばほとんど茫然自失だった)

purplekuina246.hatenablog.com

 

※目次について:3拍子の曲には星印(★)がついています。また、ナンバーは抜粋です。

 

1幕

Ragtime〜作中に繰り返し現れるアイツ(=動機)

最も重要な動機:「♪タタタタータタン」×2

私は初日の感想にRagtimeが作中に何度も出てくると書いてしまったのですが、今思えば、それは曲そのものというより冒頭にピアノで提示される4小節のことでした。これは前奏であり、その後に出てくる16小節のひとかたまり(主題)のうち、最後の4小節にあたる部分。

さらに厳密にいえば、注目すべきなのは冒頭2小節の動機(モチーフ)です。わかりやすい歌詞のところを持ってくると「♪今聴こえるシンコペーションであり、2回繰り返される「♪タタタタータタン」。採譜は載せられないので1小節分を無理やり絵文字と記号で書くとこう。赤のところがシンコペーションです。

🎼4/4♪♪♪♪♩

本来は16小節の主題の最後にあたりますが、この半音階もりもり&シンコペーションを効かせたアイコニックな動機が実は主役なんだと思います。主題の中でも前の4小節でグッと音量を落とした後、ここに向かってクレッシェンドで盛り上げていますしね。

音楽における動機について、よく引き合いに出されるのはベートーヴェン「運命」の「♪ダダダダーン」ですが、これになぞらえると、冒頭の「♪タタタタータタン」は、Ragtimeにおける「♪ダダダダーン」なのだと思います(合っているのだろうか…)

 

音程を変えてこっそり登場するアイツ

Ragtime冒頭の4小節は作品を通してたびたび登場しますが、まず本ナンバー中に、最も小さい単位である「♪タタタタータタン」×2(=動機)が違う音程で現れます。移民たちやヤンガーブラザーの登場などがそうで、これらはそれぞれ、Success(移民たち)とCrime of the Century(イブリンたち)の前フリになっています。Ragtaimeというナンバーは、今後に登場する曲のパーツを内包しつつ、観客の耳に「♪タタタタータタン」を刷り込んでゆく曲でもあるのです。

ほか、途中で4拍子の中で3拍子を取れるところがあるのですが(♪ソファレファの繰り返しの配置がそうなってる)、実際に展開部で♪ズンチャッチャと3拍子を意識したワルツ風の箇所が挟まっており、これはこのあと多用される3拍子の予感になっています。

なお、YouTubeでこのナンバーの映像をいくつか見ると、欧米での上演ではステージに3つの人種のフルメンバーが入り乱れてパンパンに溢れていることに驚かされます。アンサンブルの活躍により少ない人数で複数の人種を担う日本初演版は、そのぶん振り付けや構築的なステージングの美しさが際立つように感じます。

 

Goodbye, My Love★/Jorney On〜3拍子と4拍子の好対照

さて、3拍子も見ていきましょう!最初のナンバーは、ファーザーの北極行き🚢を見送るマザーのGoodbye, My Love。このあと、3拍子の曲のほとんどをマザーが担います。転調後に現れる主題(♪自分の〜殻を〜破り〜た〜くて〜)により、私たちは早い段階でマザーの人となりを知ることができます。

そして安蘭マザーの優美なお手振りを契機に、川口ファーザーと石丸ターテの船が交錯するJorney Onへ。こちらはティンパニやコンサートチャイムが生きる堂々とした4拍子で、マザーの歌とは好対照。八分音符🎵で2つの音をユラユラさせる波の表現や、高まりの直前に一瞬挟まれる3拍子(グラッとする感じ)がまさに船旅。ターテとファーザーの艶と深みのある美声が重なり、さらにGoodbye, My Loveのメロディを4拍子に伸ばしてマザーも参加します。どう考えても序盤から名曲が大渋滞です。

Goodbye, My Loveの前、ファーザーはマザーとの別れを惜しみますが、「アメリカに、私達みんなに神のご加護がありますように」というようなセリフがあります。この時点でのファーザーの「アメリカ」や「みんな」には、白人しか入っていないんだよなぁ…。

 

Nothing Like The City★〜「♪ですね〜」「♪ですね〜」

マザー&リトルボーイと、ターテ&リトルガールが停留所で初めて出会うシーンです。ターテは辛い境遇にいるものの、マザーの礼儀正しい態度に感銘を受け(♪あなたさま=sir)、少し心が安らいでいるもよう。

「♪おてーんきですね〜」「♪ですね〜」のところ、この「♪ですね〜」の掛け合いのリズムはこの後また出てきます(八分音符×2🎵+二分音符)。

*3

 

Your Daddy's Son〜鈍色のメゾピアノの輝き

最初は安定した4拍子で子守唄風の曲調です(4拍子×8小節の主題)。そこから感情がほとばしり始めるとリズムもどんどんあふれて変則的になっていきます。

このシーンで初めて聴けると遥海サラの歌声。まず、ピアニシモ〜メゾピアノ*4で紡がれるビブラートに驚かされました。温もりと悲しみを溶かし合わせたような、鈍色に輝く歌声。そこから一気にフォルテシモまで高めるボーカルのダイナミクスが素晴らしい🥲東京千秋楽では、心をむき出しにして差し出す歌声にさらに圧倒されました。

 

New Music〜Ragtimeに次ぐ重要ナンバー

リズム:世界一わかりやすいシンコペーション

私がRagtimeの次に重要だと考えているのがこの曲です。ファーザーのソロから始まって最後は大合唱に至り、次のThe Wheels of a Dreamへのムードを高める壮大なナンバー!

まず面白いのは、実はファーザーがめちゃくちゃシンコペーションを歌ってる件。わからない、歌えない、なじめないと歌っていながら、それ、多分世界一わかりやすいシンコペーションなのです。

この動機のうち、最初の1小節を記号と絵文字で書くとこれ(最後の四分音符♩×2は本当は二分音符で伸ばすのでタイで繋げといてください)

🎼4/4♪♪♩♩

これは、ラグタイムの有名曲、スコット・ジョプリンによる「ジ・エンターテイナー(The Entertainer)」の冒頭(🎵|♪♩♪♩♪♪|)とよく似ています(本当は2拍子なので音価はこの半分、つまりこれで2小節分)。ちなみに音の跳躍も同じじゃないかと思います(六度)。

 

構成:第二主題とRagtimeの深い関係

この曲の構成に興味を持って考えたり調べたりしてみたのですが、音楽形式については、付け焼き刃の知識では歯が立たず、これだ!という答えがわかりませんでした…。

呼び方はさておき、パーツを洗い出すと以下。

  1. 第一主題:ファーザーの主題
  2. 第二主題:コールハウスの主題(※歌うのはニューロシェルの人々)
  3. ↑これの最後に入ってくるRagtimeの動機を使ったアレンジ(コールハウスが歌う)
  4. 第三主題?(コーダ?):サラの主題
  5. 第一主題:ファーザーの主題(合唱)

第二主題をコールハウスの主題としましたが、なぜかというと、このナンバーより前に、コールハウスが「His Name Was Coalhouse Walker」で演奏するのが初出だからです。さらに、ニューロシェルの家でも披露され、Sarah, Brown Eyesでも非常に印象的に使われます。第二主題はコールハウスが歌うわけではないにもかかわらず、コールハウスと非常に縁が深いのです。「♪愛とはなにか教えられた」という歌詞もあり、サラに対するコールハウスの愛情を客観的に伝える役割があるのかもしれません。

3〜4は、コールハウスが階段を見上げてサラに呼びかけ、サラが新しいメロディで応えるシーン。この感動の再会は、ニューロシェルの白人たちが見守る中で実現したことも心に留めておきたいポイントでした*5。前述の「His Name Was Coalhouse Walker」も、Ragtimeの動機(♪サラごめーんよ)とNew Musicの第二主題の組み合わせでできています。New Musicの第二主題はRagtimeと強い結びつきがあるのです。私がNew MusicをRagtimeの次に重要なナンバーであると捉えたのは、このような理由からでした。

ファーザーは歌い終えると寂しげに下手にはけてしまうのですが、第一主題はアトランティック・シティに向かう前にも再びファーザーによって歌われます。ファーザーは、船の上ではヘンソン航海士と握手をしなかったけれど、最後はライブラリーでコールハウスと抱き合った。ファーザーも変わったのです。でも、マザーと変わるスピードが違ったんだ…。川口さんの歌声と演技が素晴らしく、そのことを何度も考えてしまうのです…。

 

The Wheels of a Dream〜“車輪”の力強い推進力

4拍子の曲。第一主題の冒頭はアウフタクト(♪ウン・ターターター)+全音符(♪ターーーー)で、リズムはとてもシンプル!シンコペーションを多用した曲とは位置付けの違うナンバーであることがわかります。基本的にアクセントが小節の頭のロングトーン全音符)に来るので、推進力を感じさせます🚙まさにWheels(車輪)の歌ですね。

サラが歌う「♪カルフォルニアもいいね」がラストへの伏線であることは言うまでもありません😭

 

Gliding★〜過ぎた日は振り返らない

こちらはターテが担う3拍子。リトルガールを喜ばせようと作ったMovie Bookで1ドルを稼ぎ出し、どん底で希望を見出すナンバーです*6。ここに出てくる「♪回る〜」のリズムは、Nothing Like The Cityの「♪ですね〜」と同じものです(八分音符×2🎵+二分音符)。さらに、ターテが「♪過ぎた日は振り返らない」と歌い終えてから流れる後奏は、エリス島でのA Shtetl lz Amerekeの変奏だと思います。これを境に、ターテは移民としての辛い日々に別れを告げるのです。

 

Till We Reach That Day〜ハーレムの嘆きが世界の嘆きへ

おそらく「霊歌(Spiritual)」の形式を取っているこの曲(時代設定がゴスペル成立より前なので)。塚本直さんの絶唱がリードする中、キャストの大合唱によりハーレムの嘆きが世界の嘆きとして何倍にも増幅し、「こんな世の中でいいの?」という重い問いを観客に投げかけて幕を下ろします。ステージが星条旗カラーに染まり、強い痛みと共に深い感動をもたらすナンバーです。

サラを抱き、狼狽と悲しみから憎悪と怒りにシフトする感情の移ろいを、表情だけで伝える芳雄コールハウスが圧巻です…(瞬きをしていなくて驚愕した)。膝に抱き上げられるとき、遥海サラは完全に脱力していてずっしりと重そうで、ああ、本当に骸(むくろ)なのだ…と思いました。

余談:初日、立ち直れなかった話→*7

 

2幕

Coalhouse's Soliloquy〜暴力にとってかわられた芸術

多くの歌詞とメロディをYour Daddy's Sonから受け継ぐ前半に続き、「♪始めてやる20世紀を」の箇所がRagtimeの主題の変奏です。ピアノの後ろから銃を取り出す演出は、コールハウスが音楽を手放すことを明確に表します。銃を構えて「♪聴くんだラグタイム」と叫ぶ姿が悲しい…。このあとのパンパンパンパン!!という乾いた銃声は、日生劇場では壁のスピーカーを使っていたのかなと思います。

 

Buffalo Nickel Photoplay, Inc〜アメリカンドリームすぎる自己紹介ソング

スーツに身を包み、別人のように軽妙な佇まいを見せるターテ。その前のGlidingにヨーロッパの香りが強く残っていたので、軽快なリズムが跳ね回るこのナンバーにより、アメリカンドリームを実現したんだということが音楽面からもわかります。この歌詞で口が回ってる石丸さん、冷静に考えてすごすぎる。スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス案件。

私は4回の観劇のうち3回を2階から観ていますが、この曲にあわせて繰り広げられる撮影チームのスーパーてんやわんやも大好きです。空を飛んでいるような疾走感も快く、この後の辛い展開を考えるとマジで逃げるならアトランティックシティだなと思います。

この曲でターテは昔と変わったように見えるけど、本当は逆なのだと思います。本来はこんなふうに才気あふれる芸術家なのに、迫害と貧困がそれを損ねていただけなのです。姿勢や歩き方すら変わってしまう残酷を、成功したターテの姿は逆照射しています。

 

Our Children★〜3拍子の到達点

安蘭マザーと石丸ターテの包容力あふれるハーモニー。これまで3拍子にのせて歌われてきた、家族をめぐる安らぎや未来への思いが、この1曲に結実しています。

メロディの美しさに心が洗われますが、アウフタクト全音符で作られる第一主題の冒頭は、拍子こそ違えど、我が子に希望を託すThe Wheels of a Dreamと似た構造と言えます。

Our Children=私たちの子どもたち。これはこの時間軸での「私たちの(それぞれの)子どもたち」という意味に加え、ステップファミリーとなる未来の時間軸での「うちの子どもたち」、さらに本作のエンディングで幸せを託された「この世界の子どもたち」まで、意味を広げて感じ取ることができます。

本作の訳詞は、いろいろなところで韻を踏んでいるところなど好きなポイントがたくさんありますが、このナンバーでは「♪子どもって〜」の最後の母音(e)が、元の「♪Our Children」と合っているのが特に好きです。

 

Sarah Brown Eyes〜この世で最も切ないデュエットダンス

コールハウスの回想が、Ragtimeの主題の変奏から始まります。芳雄コールハウスと遥海サラの密やかなハーモニーは、まさに「声を合わせる」という表現がぴったり。この曲もラグタイムなのでずっとシンコペーションしてるのですが、「♪Sarah, Brown Eyes」のところは裏拍ではなくて(1拍目と3拍目にアクセント。さらに、2人とも2拍目と4拍目を抜くように歌っている)、逆にサラへの呼びかけが際立つ仕掛けだと思います😭

そしてNew Musicの第二主題にのせての、この世で最も切ないデュエットダンス。サラはふんわりと踊りながらコールハウスの腕をすり抜け続けます。本作で一番好きな振り付けの1つです。

*8

 

Back To Before★〜内向きの平和との決別

Our Childrenでひとつのゴールを迎えた3拍子の世界は、最後となるこの曲でまったく違う可能性を示します。小節のまとまり方がバラバラで、とても不安定な構成。「昔=Before」に固執するファーザーとの会話の直後に位置するため、マザーが新しい一歩を踏み出したことがよくわかります。大きな身振りもなく、派手な演出もなく、0番に佇んで瞳を潤ませて決意を歌い上げる安蘭マザー。「♪We can never go back to before」は「♪あの日は帰らない」と訳され、譜割りがほぼぴったりで素晴らしいのですが、最後の1回だけが「♪あの日には帰らない」と訳されていて(これにより主語の「私は」が省略された形になる)、マザー自身の意志を原詞以上に反映したものとなりました。

 

Make Them Hear You〜コンサートマーチの雰囲気を纏って

芳雄コールハウスが歌う最後のナンバー。NESMITHさん演じるブッカー・T・ワシントンの言葉で翻意し、仲間たちを1人ずつ抱きしめて説得していきます。私はこの曲をコンサートマーチのようだと感じます*9ほぼ表拍で構成されており、スネアドラムが印象的に使われているからです(「He Wanted To Say」にも同様の使い方がみられます*10)。

芳雄さんが演じるからこそのコールハウスの「真っ当さ」*11、1人ひとりとぶつかりながら発露していくのですが(みんな号泣している)、とりわけ、銃を抱きしめて子供のように嗚咽する東啓介さんのヤンガーブラザーが、とても切なかったです。

こうして物語はEpiloge: Wheels of a Dreamで感動のエンディングを迎えます。

 

まとめ〜3拍子と4拍子、それぞれの役割

以上、抜粋ですが動機やリズムを中心に「ラグタイム」のナンバーを振り返ってみました。

星印(★)をつけた3拍子の曲は、これまで述べてきたように、家族をめぐる安らぎや希望の象徴だったと言えます。

では4拍子の曲はどうだったか。シンコペーションが多用される曲は新しい時代の到来を予感させつつ、Make Them Hear YouやHenry Ford*12、The Night That Goldman Spoke at Union Squareといった表拍の曲は、アメリカを前に進める役割を担ったのではないかと私は思います。最後のWheels of a Dreamのリプライズには、その意味も込められているのです。

 

 

雑誌「ミュージカル」でのインタビュー記事で、安蘭けいさんが振付のエイマン・フォーリーの言葉を紹介していました。

「先日、振付のエイマン(・フォーリー)さんが、“この作品は音楽にすべてが込められていて、音楽がちゃんと運んでくれる”と教えてくださったんです。そのお話を伺ってから、音楽を信じて、その音楽に忠実に表現していけるように歌っていけたらと思っています」

「ミュージカル」2023年9-10月号P9

「音楽がちゃんと運んでくれる」という表現は、名曲ぞろいの佳品であるのはもちろん、リプライズではなく動機レベルの細かな繰り返しによって物語を進める手法にも関係がありそうです。社会や時代そのものを主役とするような「一大叙事詩」はこのように作られたのだと、改めて感動が深まっています。

前途への希望を込めて、エンディングの背景に輝く大海原。やはり私も、音楽によってそこへ運ばれた1人の観客なのだと思います。

来週、名古屋でこの旅の終着点をいっしょに見届ける予定です。とても楽しみです!

 

 

*1:9/9夜(初日)、9/16夜、9/23昼、9/30夜(千秋楽)。リトルチームは半々で観れました

*2:初日、作詞家のリン・アレンズと共に挨拶に登壇(エイマンも客席にいた)。紹介されるまで客席にいることには気づかず、びっくりしました。今思うとすごい人と同じ空気吸ってたわ。

*3:リトルたちが柵から身を乗り出して歌い合うパート、リトルガールの「(ママは)死んだ」の後のバスドラム(ドォン)が好き。

*4:最初はピアノ〜メゾピアノって書いてたけど、芳雄さんの連載を読んでピアニシモに修正しました

*5:本音を言うとサラ目線で見たいです

*6:苦境にある間、石丸ターテは何度もリトルガールを抱きしめて慰めるのですが、思い出すだけで涙がブワッときます…。

*7:初日、展開にショックを受けて、この歌の記憶がほとんどありませんでした(なんということだ)。ある時点までは「いや大丈夫、サラは気を失っているだけだ」と思い込もうとし続けました(無理筋がすぎる)。その後1週間、そんな自分にめちゃくちゃ落ち込んだりもしました(2回目の鑑賞で音楽に改めて魅了され、今に至るのですが)

*8:この直前、コールハウスはサラに手招きし、ピアノの椅子をはんぶんこして座るのですが、ここでサラの背中に回したように見えた手は、実はピアノのへりに引っ掛けてあります。触ってない…。コールハウスがサラの背中を支えるような振り付けは、もしかしたら我が子を抱く様子なのかもと千秋楽に思い、その背中にいたずらっぽい笑顔で触れようとする(そして触れない)サラの姿を見て、私のオペラグラスの視界は激しい揺れに襲われました。嗚咽めっちゃ我慢した…。

*9:吹奏楽の「アルセナール」という曲を彷彿させます。私もなのですが、演奏したことがある人はみんな大好きな曲じゃないでしょうか。

*10:土井ケイトさんのエマと東啓介さんのヤンガーブラザーが素敵ですが、そこにまったく違う毛色の歌声で「♪羨ましいよ無邪気で」と加わる芳雄コールハウスが最高なのよ…

*11:別の機会に書こうかとも思うのですが、差別と戦うストーリーにおいて、コールハウスが完璧な善人ではないことは、とても重要なことです

*12:アンサンブルの横一列+横向き、かつ腕の直角を強調💪した振付で工場のラインを表しているのだと思います。これも大好き!

ミュージカル「ラグタイム」感想/今聴こえるシンコペーション〜主人公は“誰”なのか考えた結果(2023年9月9日・日生劇場・初日)

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まだ半ば呆然としながらキーボードに向かっております。とても壮大で奥行きのある作品で、ミュージカルを観始めて日が浅い「私」という小さな箱には、到底入り切るものではありませんでした。

それでも言えることがある…!

観に行ってよかった。この初日に立ち会えてよかった。

 

言葉にするのが追いつかない状態ですが、ひとまず初日の感想を残しておきます。

最後の段落を除き、展開についての重大なネタバレは避けています(細かいストーリーや演出等についてはもちろん触れていますのでご注意を。あと注釈に飛ぶとそこにもネタバレがあります)。

あと、歌は全員、うますぎました。詳細については機会を改めることにして今回は潔く省略します(ええっ)。

 

※ミュージカル初心者の感想です。

※パンフレット*1は一部だけ読んでいます(書くことに影響しそうな部分は未読)。

 

 

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3つの人種をどう描くか〜表現と表層

オープニングナンバー「Ragtime」が意味するもの

開幕前。すでにスクリーンのような幕が降りていて、3つの人種の「群」の絵柄が投影されています。あと、ブランコにのってる人とぶら下がっている人も。

まだ客電が明るいうちにそっと下手から現れたのは、石丸幹二さん演じるターテ。粗末なショルダーバッグから取り出されたハサミが一閃…紙に切り込みが入れられる様子が映し出され、驚くことに、幕の中からほんものの人々が出てきました。

(これは今ならわかる、ターテの切り絵の技術が「Movie Book」を生み、さらに“ほんものの人々”が躍動する映画につながるということに)

 

カラフルな衣装に身を包む黒人

真っ白にドレスアップし、パラソルやテニスラケットを優雅に掲げる白人

静謐なグレーをまとい、トランクを捧げ持つユダヤ

 

3つの人種は一目瞭然で描き分けられ、交わることのない強固なグループをつくって舞台上を行き交います。これはすべてを日本人が演じていても、すんなりと理解することができました。

押し寄せる分厚いハーモニー、期待感をかきたてるシンコペーション。圧倒的な歌唱と管楽器てんこもりのゴージャスなオケが耳を喜ばせます*2。当時流行していた「ラグタイム」の形式をとる冒頭の「Ragtime」は、本作の「すべて」と言っても過言でないくらいの重要性をもつナンバーでした*3。これについての現時点の解釈は、後述。

 

コールハウスとブッカー・T・ワシントンはどう演じられたか

ついこの間まで、帝劇で若き作曲家・クリスチャンを演じていた井上芳雄さん。彼が演じるコールハウスは、クリスチャンよりも明らかにガッシリした体型に見えました。これは演技(歩き方など)や衣装の力によるものだと思いますが、もしかして2週間の間に筋肉をつけたのかもしれない!?という思ってしまったくらいです(絶対違う)。しかし、舞台から放たれる「体格がよい」という印象は、黒人であるコールハウスを演じる上では確実に必要なものだったと思います(本人の恵まれたプロポーションも活かしつつだとは思いますが)。

さらに歌声も深く、厚みのある低音で、ちょっと近寄りがたい緊張感も帯びていて、改めて変幻自在ぶりを実感しました。

一方、実在した黒人指導者であるブッカー・T・ワシントンを演じたのは、EXILE NESMITHさん。ラジオで芳雄さんが評していたとおりの“深い声”が魅力的でした。さらに威厳のある佇まいからは、尊敬を集める人物であることが的確に伝わってきます。

私は本作を観るにあたり、いかに「表層」から逃れて本質を受け取ることができるだろうか…とわりと真剣に頭を悩ませていたのですが、ルーツに基づく見た目をもつNESMITHさんは、私たち日本の観客にとって、想像力をサポートしてくれる得難い存在でした。黒人がどのように苦難を受け、彼がどのように人々を説いていたか。彼の好演は、そのことをすごくわかりやすく手渡してくれて、私は素直にありがたいと感じました。

 

時代の象徴としてのラグタイム

彼らには、なぜ名前がないのか

本作でとても不思議なポイントのひとつ、それは多くのキャラクターに「名前」がないこと。コールハウスなど一部の人物には名前があり、さらには前述のブッカー・T・ワシントン含め、イヴリン・ネズビットなど実在した人物の固有名詞はわんさか出てきます。でも、ターテは「父」という意味で、安蘭けいさん演じるマザー「母」。さらに川口竜也さん演じるファーザーに、東啓介さん*4演じるヤンガーブラザー…主要な役柄名の多くが続柄でしかなく、実際に観ていて感じましたが、名前を呼びかけずにお芝居をするのって、少し骨が折れるのではないかと思います。さらに彼らは入れ代わり立ち代わり“語り手”になるのですが、「お父さんは」とか「弟は」とか、自分のことなのに三人称でどこか他人事のように説明をします。これには、ちょっと頭がこんがらがったりしなくもないのです。

 

主人公は“誰”だったのか

ではなんで、こんな作りが意図されているのか。

いち観客としての私が、展開に驚愕しエンディングに涙し、カテコと初日挨拶をスタオベで称え、煙が出そうな頭で地下鉄に揺られ、帰宅して料理しながらぼーーーーっと考え続けてたどり着いたのは、この物語の主人公は“時代”そのものなのでは、という仮説でした。それはどういう時代かというと、アメリカで「ラグタイム」という音楽が流行っていた、ほんの20年くらいの間*5オープニングナンバーの「Ragtime」は、これでもかというくらい劇中で繰り返し流れ、物語の背景にあり続けました。一方でコールハウスは途中で音楽を手放すことになり、少なくとも「ラグタイム」という音楽“が”主役だったわけではないと感じます。でも、その時代にはずっと、どこかで「ラグタイム」が流れ続けていた。

劇中には人種問わずたくさんの人が登場しますが、袖振り合うも多生の縁だったり、それどころか袖も振り合わないレベルだったり、すべての人たちが深く関わり合うことはありません。本作ではラグタイムが流行っていた20世紀初頭のほんの短い間、アメリカにはこんな人たちがいました」ということを、実在の人物も取り混ぜながら提示していたのではないでしょうか。マザー、ファーザー、ヤンガーブラザー…。名もなき人が生きて、名もなきまま死んでいった*6。一見、混沌としているようですが、つまり、それこそが“時代”だと言えるのかもしれません。

 

オープニングの「Ragtime」で、交わることなく並び立っていた3つの人種。ラストシーンでは、フィクションの登場人物を用いることで願いを込めた結末が示されました*7。最後の最後、イカしたキャメルのスリーピースをぴっちり着込んだリトルコールハウスが走り込んできた瞬間、ぷつりと緊張の糸が切れて、初めて涙があふれました*8これぞカタルシスだと感じる瞬間でした。

ターテが示した子を思う深い愛情、マザーが歌った人類愛と自立心、そしてコールハウスやサラが戦った苛烈な差別…。ミュージカル「ラグタイム」は、およそ120年前を舞台としながら、良くも悪くも現代に通じる普遍的なテーマを、アメリカという巨大な器に盛りつけたダイナミックな群像劇でした。私はこの作品をちゃんとわかるにはアメリカのことを知らなさすぎる、と正直に思います。でも出会えたことを心から喜びたいです。その普遍性は、当然ながら国境を超えて私たちにも届くものだからです。

石丸幹二さんも締めの挨拶で「観たいって人、いると思います!声かけてください!」とおっしゃっていましたが、気になっている方にはぜひ足を運んでみていただきたいです。私もあと少し観る予定なので、少しずつ深めていきたいなぁと思います。作品に関わる人々の思いの深さと誠実さに、深く胸を打たれた初日でした。

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最後にちょっとだけ、重大なネタバレを含む芳雄のコールハウスの感想を置いておきますね。

 

 

 

 

 

 

 

芳雄コールハウスについて覚え書き(※ここだけネタバレです)

ファン歴1年未満の私。芳雄さんに舞台の上で死なれるのは初めてでした。

1幕の終わりに遥海さん演じるサラが命を落とした時点で、実はちょっと具合が悪くなるレベルのショックを受けており(しばらくの間、死んだのではなく気を失っているだけだと思い込もうとした)、その後、2幕でコールハウスが音楽を手放して銃を手にし、取り返しの付かない罪を犯した時点で、もう結末はなんとなく察していて、図書館の立てこもりの時点では確信していました。助かるわけない…。

ドアを開けて投降するときは、お願いだから出ていかないでと祈っていました。わかってはいたけれど銃声が響いたときは本当に辛かった…。

*9

しかし辛子色のスリーピースでビシッとキメた芳雄コールハウスは、文句なしのかっこよさでしたね。「ムーラン・ルージュ!」のクリスチャンもチェスターコートがトレードマークの1つでしたが、本作でもシフトチェンジにコートが使われていたのが印象的でした。シャープなシルエットの超ロングコート、あれを“着られてる”感じではなくしっかり着こなして裾をさばいて歩けるのは流石です!

 

日経クロストレンドの連載に登場した「感情の蛇口」という比喩の意味は、それはもう、よくわかりました。蛇口、全開でした。パッキン、ぶっとんでました。

 

熱い拍手に包まれたカーテンコール、初日挨拶ではいつも通りの芳雄さんで、笑わせてくれて、少しホッとしました*10

あらためて、日本初演という冒険をともにできること、幸せに思います。

 

 

 

 

*1:理解の助けになる資料や解説が超充実!これだよこれ!パンフにはこういうのを求めていました。自分の感想が引っ張られそうなので、今日の時点ではチラ見にとどめておいています。

*2:サントラ聴いて期待してたのです!最高

*3:このナンバーが終わったときの熱い拍手は感動的でした

*4:全員素敵だったけど、特にめっっっちゃくちゃ良かったです!!

*5:その後はジャズに取って代わられてしまう

*6:グランドファーザーはともかく、ファーザーもナレ死してしまったよ…!しかもセルフでっ…!

*7:3つの人種からなる幸せな家族ができた…!

*8:展開がショックすぎて涙が出なかったんです

*9:ブッカーから「同じクリスチャンとして」という言葉で強く説得されながら、実際にクリスチャンである芳雄さんはどんな気持ちでいたのだろうと思ったりもしました。

*10:笑いが起きるシーンはあって…「情け深い肉屋」とか。そういう救いもありがたかった。野球観戦シーンのホームランキャッチも可愛かったな⚾️

舞台「SHINE SHOW!(シャイン・ショウ!)」感想〜誇りという名の“社員証”を胸に(2023年8月19日・シアタークリエ)

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開幕直後の8/19に観劇してきまして、超絶おもしろかったのでこれは絶対に感想を書こうと心に決めておりました。東京千秋楽も終わってしまいましたが、兵庫公演もあるということで、書きます!

 

まず手短に、ネタバレなしのおすすめポイントを挙げたいと思います。

舞台は「あかりビルディング会社対抗のど自慢大会」というオフィスビルの伝統行事。主演の朝夏まなとさんは、その運営を任されている鈴本という役を演じています。ひとことで言うなら、出演者の中川晃教さんによるPRコメント*1「バックステージもののシチュエーションコメディ」という表現がぴったり。これでピン!と来る人は、絶対好きなんじゃないかとと思います。私もその1人でした。

そして、もう1つ挙げるなら、三谷幸喜が好きだったら多分ハマる!ということ。キレのいい会話劇や伏線回収もそうですが、大量の人間が出てくるバックステージものでたった1人だけがマトモであり…という構造は、まっさきに映画「THE 有頂天ホテル」(2006)を想起させました。このイメージは、パンフで冨坂友さんや山田和也さんのコメントを読んだところ、間違ってはなかったみたい。

あとは、とにかく笑えて、元気になれる!そして、まぁ様の美しいお仕事姿をずっと見ていられるってところですかね!

 

…以上が、(兵庫公演に向けての)ネタバレなしの説明でした。

別に犯人が誰かを当てる推理モノでもないし、ネタバレ配慮なんかいらないとは思いつつ……。やっぱりあまり情報にも触れずに、誰が何を歌うかとかも知らずに観てほしい作品でした。客席でどっひゃっひゃっと大笑いするあの幸福を、ぜひ味わっていただきたいと思います。

 

では、パンフに記載のある全キャスト(19人)を展開ごとにざっくりグループ分けして、ネタバレの感想を綴っていきます!*2

※1回しか観ておらず、間違いがあったらすみません!

 

 

各キャストを軸にした感想

これから触れるシーンはPVにも一部出てきます!*3

 

意味がわかると怖い!?司会コンビ〜山田&彩木

演:西村直人(山田しゅんいち)・鹿島ゆきこ(彩木みどり)

本作は観客を「あかりビルディングのど自慢大会」*4の客に見立ててスタートします。冒頭の影アナを山田役の西村さんが担当されていて、「出場者は皆この大会に人生をかけてこの大会に挑みます」「一般の会社員ですのでカメラに慣れておりません」「前のめりはお気持ちだけでお願いします」など、一般的な観劇中の注意事項を世界観にからめてアナウンスしていくのですが、その絶妙な間でススーッと引き込んでいきます。

幕が開くと、“司会のお兄さんとお姉さん”である山田と彩木が台本とマイクを持って登場。ハイテンションな山田を冷静な彩木があしらいながら進んでいくのですが、1幕の途中でこの2人が破局した恋人同士ということがわかると、2幕冒頭で再びやってくる司会進行シーンの意味が全然違って見えてきます。彩木は冷静にあしらってるんじゃなくて、鬱陶しい元カレに塩対応をしていたのだった…*5

結局、山田の復縁チャレンジは失敗。とはいえ彩木は「司会として信頼してるから」と、仕事仲間としてちょっぴり含みをもたせるのでした。

…まぁそいつ(=山田)、2幕で「体感で12分」、仕事サボってたけどな!!(※後述)

 

元アイドルと現役VTuberの愛すべき自意識〜琴浦&笛木&浅見

演:花乃まりあ琴浦あかね)・栗原沙也加(笛木里穂)・淺越岳人(浅見 保)

楽しみにしていたキャストの1人、元花組トップ娘役の花乃まりあさん!演じる琴浦は、元・N木坂の1期生*6で現在は派遣社員という設定。巻き髪と内勤OLの制服が似合いすぎ!

琴浦は警備室に入り浸り、警備員・浅見に愚痴やらなんやらを聞かせ続けます。ハンディ扇風機を片手に回転椅子にグダグダ座ってるだけで可愛い。自分が言われた「アイドルじゃないんだから!」を再現するときのポーズがチャーミングなのですが、確か3回くらい言ってたのでめちゃくちゃ根に持ってると思われます。あと、朝夏まなとさん演じる鈴本のマネをするところがあるのですが、宝塚の男役スターっぽく寄せていたのは気のせいでしょうか😂鈴本そんな感じだったっけ!?いやそりゃ本物っていうかその頂点にいた人だから間違ってないんだけど??

2幕でいよいよ登場人物たちの歌唱シーンが始まりますが、その先陣を切ったのが琴浦でした。曲目は松浦亜弥「♡桃色片想い♡」。本家を彷彿させる衣装が可愛すぎて、登場しただけでブチ上がったのですが、花乃まりあさん、めちゃくちゃ歌が上手い!

 

そして、

容赦なく客席を釣りまくる件。

 

ばっきゅんばっきゅん撃ってくるんだもん、胸がキュルルンどころの騒ぎではありません。こ、これが元トップ娘役の能力(ちから)…!

そしてこの曲中に、これまで琴浦にめんどくさそうに対応してきた警備員の浅見が、実はガチの古参オタだったと明かされるのも小気味いい。オタクの夢って叶うんだな…!

 

次の出演順が、VTuber「星乃ミチカケ」という裏の顔を持ち、身バレを恐れるあまり自意識過剰で意味わからこんことになっていた笛木(演:栗原沙也加)。曲目は広瀬香美ロマンスの神様です。このとき私は正直、花乃まりあさんのあややが圧倒的だったのと、難しい曲であること、さらに笛木の衣装が普段着であることから、失礼ながらこの後に歌うって(のど自慢大会の出演順としても)不利じゃないかなぁ〜といらん心配をしてしまいました。

 

……いやめっちゃ上手い。

 

パワフルなハイトーンを客席に轟かせる栗原沙也加さん、ロマンスの神様」が似合いすぎてるし、うますぎる!!

笛木と琴浦は出番の前にちょっとやりあうシーンがあったのですが、下手袖で笛木の歌を聴いていた琴浦は、ピンクのテンガロンハットをさりげなく脱いで胸に抱いており、まさに「脱帽」を表現していました。笛木も終盤、VTuberとしての配信で次に歌ってみたい曲として「♡桃色片想い♡」を挙げていて、お互いに刺激を受け、認め合う様子が描かれます。改めて脚本・演出の妙にうなりますし、この筋書きは2人とも歌がうまいから成り立つやつ!って思いました。

 

情報量の多すぎる「楓」〜和歌山&由梨&真嶋

演:中川晃教(和歌山 翔)・柳美稀(小出由梨)・斉藤コータ(真嶋隆詞)

さてこの3人は、スピッツ「楓」をめぐるドタバタの関係者。今カレと元カレの選曲が被るとかいう地獄について、おもに中川晃教さん演じる和歌山(=今カレ)が1幕からギャグを牽引します。

一方、カッコつけて脚を組む所作を繰り返す真嶋(=元カレ)は和歌山からめちゃくちゃライバル視されますが、曲が始まったかと思いきや作中で歌わせてもらえないという構造的ギャグの犠牲になります笑。

 

そして始まった、中川晃教さん演じる和歌山の歌唱シーン。

なんという透明感と清涼感…!ステージのセンターから溢れ出した泉が、同心円状に広がっていくのが見えるかのよう。直前に「芳雄のミュー」で「楓」の歌唱は聴いていたのですが、イリュージョンを思わせるこの感じ、今までに生歌を聴いたどの人とも異なる初めての体験でした…。やはり生はすごい!

そして、ステージには心象風景として恋人の由梨が現れ、ちょっとしたダンスシーンへ。ドライアイスが流れる幻想的な演出は、ミュージカル映画雨に唄えば*7の「♪You Were Meant For Me」みたいでロマンチックでした!

かと思いきや、美しいサビに真嶋と山田が失意にまかせて下ハモリで乱入するというギャグ。これが前述の山田の仕事放棄につながるのですが、このサビにハモリが欲しくなるのはめっちゃわかります。笑

私にとって、由梨(とても可愛い)は最後までちょっと謎めいていたのですが*8和歌山がハッピーになれることを祈りたいと思います…!

 

それにしてもさぁ、和歌山も真嶋もさぁ、愛する人に向けて歌う曲のサビが

♪さよ〜〜な〜〜ら〜〜〜

ってやっぱり、ダメじゃない???(真顔)

 

♪粉雪 ねえ 舞台まで白く染められたなら〜鐘巻

演:木内健人(鐘巻良雄)

私が本作で最も爆笑したのが鐘巻のレミオロメン「粉雪」歌唱シーンでした。同僚が障害対応に追われるなか出場する後ろめたさで「自分は嫌われている」と思い込むようになり、「チャットルームから締め出された」「カードキーが失効させられた」といった状況証拠からどんどん確信を深めてゆく、ミスター被害妄想。

歌唱シーンがやってくるまで、要所要所で現れては絶望を表現するのですが、長い手足で毎回クドいポーズを取っていて、ふわふわのヘアスタイル*9の上に乗っけたシュレッダーくずを器用に振り落とす「嘆きのフルフル」とか、カードキー失効のショックで沈み込む「秘技・カードキー残し」とか、登場するたび最高でした(※勝手に名前をつけました)。

出番直前に誤解が解け、調子を取り戻した鐘巻。彼の歌唱曲が「粉雪」であることは、和歌山が出場順を変えたいとゴネたときに、セトリが「楓」→「粉雪」→「楓」であると明かされたことで知っていました。が、ストーリーが進み、大会名物の「シュレッダーくずによる紙吹雪」の存在、さらには鐘巻の同僚が応援の気持ちを込めて自社のシュレッダーくずを提供していることを知っている状態で歌唱シーンを迎えると、「これは……」という期待で肩が震え始めます。

 

♪こなぁ〜〜〜ゆき〜〜〜

 

美声を響かせる鐘巻の頭上にドバァァァと落下する雪塊、もといシュレッダーくず。

くるぞくるぞ…キタァァァ!という快感のなか、客席で涙を流して爆笑しました。

うまければうまいほど笑いを誘う「粉雪」。口の中にも入っちゃったのかなと察せられましたが最後まで歌いおおせ、木内さんの役者魂を感じました*10

 

若手社員という“季節”〜加瀬

演:小越勇輝(加瀬貴久)

鈴本の部下で、大会運営においては新人である加瀬。演じる小越勇輝さんがとっても爽やかで、リアルにこんな後輩いたらいいのになぁ〜と思える存在でした。

出場者たちに振り回されながら懸命に対応する加瀬を通じて、観客は、社会人として大事なことを学び取ることができます…。「自分に与えられた裁量を見誤らない」「確認は丁寧に」「『だろう』で判断してはいけない」などなど…若者向けビジネス書の主人公(?)を見守っている気分です。

優秀な上司であるはずの鈴本が玄田のオタクとして機能停止に陥ったとき、なんとか喋ってもらおうと足を上げてチョイチョイ合図を出すのが超かわいかったです。そして音尾の父への怒りに過度に共鳴する“青さ”も…。若手社員の頃という、いつかは過ぎ去ってしまう“季節”を等身大に演じる姿が素敵でした。

 

ファーザーからのアンサーに感謝〜音尾&定岡

演:増本 尚(音尾圭介)・石坂 勇(定岡俊律)

その加瀬が感情移入しまくった相手が、あかりビルのVIP・定岡と親子関係にある音尾。Zeebra「Street Dreams」の替え歌で家庭を顧みなかった父をディスり倒すという恐ろしい計画が明らかになります。

結果、定岡が拡声器を片手にステージに上がりラップバトルで親子喧嘩→和解という胸熱展開に。2人のラップはめちゃくちゃ見応えがあって(パンフによるとちゃんとラップ指導がついていた!)、何よりレコード会社の重役がラップで息子に思いをぶつけるというギャップが最高でした。

 

影の進行役だった“外部”の人〜黒川&多田&井荻

演:伊藤圭太(黒川義人)・榎並夕起(多田ちひろ)・三原一太(井荻 剛)

黒川は、運営にかかわる代理店の担当者。決め台詞は「代理店なんで(キリッ)。多田と井荻はラジオ番組の取材に来ているアナウンサーとライター。要所要所に登場し、思い込みで暴走している笛木や鐘巻に彼らが接触することで、さりげなく物語を進行させていたのがうまいなぁと思いました。多田はN木坂で琴浦と同期だった設定。大会終了後に琴浦と話し、自分もがんばろうという気持ちを新たにします(というセリフはないけど伝わる)。ライター・井荻役を担ったのはスウィングの三原さんで、スウィングが不可欠であることを改めて感じました。矢吹さんもお元気になられているといいなぁ…。

 

「長渕観」の向こうに〜大島&弦田&秋野

演:山下雷舞(大島しげお)・久ヶ沢 徹(弦田継俊)・前田友里子(秋野仁美)

本作でとても大切な言葉があります。それは「長渕観🌋」!!

弦田は証券会社の支社長で、のど自慢大会のレジェンド。長渕剛の仮装つきパフォーマンスで有終の美を飾る予定でした。ところが、部下の秋野がリモート会議をサボっていたせいで、顧客に大損害が発生…!!

この「秋野のサボり」の伏線はすごかった!秋野はのど自慢オタクすぎて、仕事中なのに勝手に運営に参加しているのだけど、リモート会議をサボっているというギャグが、VTuber笛木に絡み、さらにクライマックスのきっかけになるとは思いもよりませんでした。本当は大会にめちゃくちゃ出たい秋野、ステージに運んだマイクにそっと触れようとして自省するのが面白すぎました。そして秋野を演じる前田友里子さん、幕間に感想をつぶやいたら、いいねをくれましたwwwww仕事中に何してるんですかwwwwダブルミーニング)。

ゲスト歌手の大島は弦田との「長渕観🌋」の違いからゴネ続けますが、なんといっても流れを決定づける「面白くなってきたァァァ!!!💪」が最高でした。

そして弦田は、自身のラストステージを諦め、秋野がやらかした件の責任者として対応に向かうことに。弦田&秋野のやり取りからは、「自分で責任を取れるかどうかは、偉さによる」という学びを得られます…。久ヶ沢徹さん演じる弦田はスマート&ダンディで、立ち方とかアイコスの握り方とかちょっとした所作にリアリティを感じました。

 

仕事をするって、こういうこと!〜鈴本

演:朝夏まなと(鈴本真紀)

楽しみにしていた、久しぶりのまぁ様!*11

ブルーのパンツスーツを着こなし、清潔感のあるまとめ髪にキリッとしたメイク。かっこいい!美しい!!見た目だけで既に仕事ができる!

そして1.25倍速でYouTubeを見ている時のような早ゼリフ神がかった滑舌でさばき、懇願&謝罪のお辞儀(n回)は完全にサラリーマンのそれで、タカラジェンヌのそれ。美しいから一生見ていたいです(←鈴本が可哀想だからやめな)

頭の回転が速い鈴本は、降りかかる無理難題に対して柔軟に解決策やプランBを提案します(「では、○○というのはどうでしょう!」みたいなセリフがたくさん出てくる)。この提案力は中堅以上の会社員としてはめちゃくちゃ見習いたいところ。誰が相手でも誠実に対応し、部下のことも怒ったりせず成長を促していて、まさにパーフェクトなビジネスウーマンです。

そんな鈴本の弱点は、実は弦田のオタクであること…!!弦田が絡むと突然バグり、小越くん演じる加瀬もこれにはびっくりです。加瀬に色々バラされて思わず口をついて出た「おま、全部言うのな!!💢」は最高でした🤣

とうとう、弦田と「長渕観🌋」を共有する者としてまさかのピンチヒッターを務めることになった鈴本。固辞していたものの覚悟を決め、トランシーバーを外して加瀬に託すシーンはかっこよかったです。メガネキャラが本気出す時みたいで震えました。

…この時の私は、鈴本の音痴設定を完全に忘れていたのです。

 

そんなわけでラストナンバーは運営・鈴本が魂を込めて歌う長渕剛「とんぼ」でした!!

仮装に関する伏線もすべて回収し(ガチで)、見事な早替えも披露し、鈴本はフルコーラス歌いきりました。そう、想像を絶する音痴で…!

 

私は退団後にファンになった人間ですが*12、まぁ様の美しい歌声は「ローマの休日」や「マイ・フェア・レディ」でちゃんと聴いて、知っています。だからうまい歌も聴きたかったなぁ…という気持ちがないと言ったら嘘になります。

でも、まぁ様は引き受けて、カッコよくやり遂げた!

仕事を全うするって、こういうことだから!!

まぁ様はパンフの座談会でこのシーンについて「窮地に立たされた人の馬鹿力」と表現していましたが、観客としての私は、作品のテーマに重なる「仕事への姿勢」に感銘を受けたのでした。

 

まとめ〜仕事と、仕事にまつわる余白

カーテンコールに応えるキャストたち。お辞儀とともに「社員証」が楽しげに揺れ、そこには“誇り”が光っているようでした。

「この大会は、普段は別の仕事をしている会社員が歌うことに意味があります」。弦田が鈴本に語ったこの一言に象徴されるように、仕事と、仕事にまつわる余白を緊密に織り上げた快作だったと思います。

作中にはTwitter→Xへの名称変更など今のトピックもふんだんに盛り込まれていましたが、そのひとつであるリモートワークの普及などにより、オフィスビルの運営はおそらく転換機を迎えているはず。さらに会社対抗イベントなんて間違いなく昭和のレガシーなわけで、そのことを念頭に置くと、失われゆくものへのノスタルジーも込められているのかなぁと思えてきます。

仕事って、働くってなんだろう。何年働いても答えは出ないけど、それでも明日からまた頑張ろう。そんな気持ちになれる素敵なコメディでした!

 

Take Home Message〜シャイン・ショウ!に学ぶ社会人の心得

  • 自分に与えられた裁量を見誤らない
  • 「だろう」で判断してはいけない
  • 達成すべき目的を見極め、柔軟に対応する
  • 忖度も時には必要だけど筋を曲げるのはやっぱりおかしい
  • 自分で責任を取れるかどうかは、偉さによる
  • リモート会議はサボるな
  • 謝罪するときは誠心誠意
  • やり遂げるってカッコいい

 

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↑よく見たらこの紙吹雪って…。

客席ではどっかんどっかん笑いが起きて、ほぐれた雰囲気で楽しむことができました。公演期間後半はさらに盛り上がっていたのかなぁ。シュレッダーくずを送り付けたい気持ちをぐっとこらえて、兵庫公演での大盛況もお祈りしたいと思います!

 

 

*1:8/17東宝演劇部アカウントにアップされた、「芳雄のミュー」後の井上芳雄さんとの番宣コメント

*2:まぁ様もパンフで言及されていましたが、日本人の役ってどっちが役名でどっちがご本人のお名前かごっちゃになりますね!?今回は役名のほうを括弧書きにしてみました。

*3:セリフの確認とかできて助かりました

*4:フィクションではありますが、どうやら、本当にそういうのど自慢大会があるらしい、というのを最近SNSで知って超びっくりしました

*5:イベントを進行しながら出場者が歌っている間に、よりを戻したい山田は彩木に絡み続けるのですが、山田が別れる前にフラッシュモブを計画していたという話が出てきたとき、いかにも山田はそういうサプライズを考えかねないと思ったし、この脚本なら客席に仕込みの人がいてフラッシュモブが始まってもおかしくないぞと若干ドキドキしてしまった笑

*6:作中では本物が出てきてたんだけどなんとなく検索避けを、、笑

*7:大好きなので隙あらば引き合いに出す

*8:実は結末がじゃっかんわかっていない気がします…私だけかも😂

*9:スパイファミリーのフランキーもふわふわだったよね!?←配信で観ました

*10:紙吹雪って材質や形状によって飛び方が変わりますが、そのさまざまな美しさはムーラン・ルージュで体験していたので、なんかこう、「シュレッダーくずは紙吹雪としては美しくない」ということもジワジワきました

*11:昨年のシスアク、私のチケットは中止で払い戻しに🥲

*12:2020年の帝劇コンからの、超ゆるいファンです

「ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル」祝千秋楽!“せいいっぱいの愛”を書けるだけ(望海風斗・平原綾香・井上芳雄・甲斐翔真ほか各キャスト感想)

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本日の千秋楽、おめでとうございます!

私自身は8/24にマチソワして終了だったのですが(さみしくて死ぬかと思った)、ロングランかつ大所帯で1公演残らず完走できたことを、心から祝福したいと思います👏

演目としての感想はすでに上げていますが、後半戦の観劇を中心に、プリンシパルキャストを中心に好きなところを書けるだけ書いていきます。

 

※ミュージカル初心者の感想です。間違いがありましたらご容赦ください。

 

 

感想のソース(計7回)

席は前方からB席までさまざまです!

  1. 7/6夜(望海・井上)→感想
  2. 7/18夜(平原・井上)→感想
  3. 7/27夜(平原・井上)
  4. 8/5夜(望海・井上)
  5. 8/13昼(望海・甲斐)
  6. 8/24昼(望海・井上)
  7. 8/24夜(平原・井上)

 

各キャストの感想

ティーン&クリスチャン

ティーンについての考察はこちら(原作映画と比較しました)。

purplekuina246.hatenablog.com

 

ティーン:望海風斗〜リーダーシップが逆照射する愛
  • 望海サティーンのダイヤモンドは、「硬度」。とても硬いからこそ、砕いたときの輝きが繊細でまばゆい。
  • 強くてカッコいいのに儚げで、少しずつ死に吸い込まれていく様子が切なかったです。
  • 特に好きなナンバーを挙げるなら、「♪Sparkring Diamond」と「♪Firework」です。前者は0番で光り輝くために生まれたのだというスター性にひれ伏し、後者では「♪まるで私、紙切れみたい…」とつぶやくような歌声が、セリフのようで、でも確実に歌心がのっていて、そのコントロールにうなりました*1
  • たぶん望海さんは2023年夏の日本で「オハイオ」を一番セクシーに言える人だと思う。
  • あとね、特に好きなのがクリスチャンや公爵の胸ぐらを掴む力がめちゃくちゃ強いところです(両手でラペルを掴んでぐいっと引く)。これぞ元トップスターの圧…!
  • 甲斐クリスチャンとの組み合わせでは「高嶺の花」としての輝きがいっそう溢れていて、甲斐クリスチャンを通してサティーンに夢中になるような気持ちを味わえました。
  • 望海サティーンからは、クラブを背負う看板スターとしてのリーダーシップや責任感を強く感じ、そのぶん思いがけず恋に落ちる姿がドラマチックに映りました。

 

ティーン:平原綾香〜魂では愛を知っていた人の愛
  • 一方であーやサティーンのダイヤモンドは、「密度」。登場の歌い出し「♪ダイヤは永遠…」から目を見開いてしまう。パワフルで濃密な歌声を響かせて、この人はどう見ても死にそうにありません。
  • それなのに、終盤では生々しく弱ってゆき、本当に死んでしまうので、観客としては強いショックを受けるのです。公演期間の後半になると、セリフの合間に混ぜる咳が増えていて、本当に咳をしてしまったのかと思うほど自然かつ病的でした。
  • 「ママの仕事ぶりを見てて。にゃ〜ん」に代表されるコケティッシュなコメディエンヌぶりもすばらしく、私はピッチソングの前後、クリスチャンと公爵を迎え入れるときの「どうぞ」のトーンの使い分けが大好きです。*2
  • この女っぽさは「♪Chandelier」でも生きていて、緑のライトに照らされて妖精の姿で現れるとき、ちょっとメイクが違って見えるのです。表情に「人でないもの」のオーラがあって、妖艶を通り越して毒々しいくらいでした(ゆえにクリスチャンの泥酔と苦悩が伝わってくる)。
  • 特に好きなナンバーを挙げるなら「♪Elephant Love Medley」。これが歌姫の面目躍如であることは言うまでもないのですが、おそらくあーや自身が愛の人で、そのこともラブソングの応酬であるELMにはピッタリきていたのだと思います。同じく愛の人であろう芳雄クリスチャンと歌声で殴り合い、その火花で舞台を輝かせるELMの世界が、本当に大好きでした。
  • あーやサティーンは愛を拒絶しながらも、たぶんその魂は最初から愛を知っていた。8/24夜、事切れる前にもう一度口づけようと身をもたげ、それを芳雄クリスチャンも察したけれど、間に合わなかった…。涙が止まりませんでした。

 

クリスチャン:甲斐翔真〜エトランゼとしての説得力
  • どうしても甲斐クリスチャンも知りたくなり、「のぞかい」の組み合わせで狙い撃ちして観てきました!!*3
  • 彼が「等身大」の若者であることはすでに言及されてきたと思うのですが、私はパリにやってきたエトランゼ(異邦人)としての説得力に注目しました。
  • あふれる生命力と、フィジカル&メンタルの距離の近さ、さらにはちょっぴり自信家な振る舞い。ボヘミアンズになじみそうでなじまない異質さを保つ身体性が、“パリのアメリカ人”だなぁと終始感じさせます。甲斐クリスチャンと望海サティーンの組み合わせは、年上のパリジェンヌに恋してぐいぐい迫るヤングアメリカン、という構図がめちゃくちゃリアルでした*4
  • 「singer songwriter」の本物っぽい発音は、その役作りにおいて発明レベルのアイデアだったのではないでしょうか。
  • 私はエリザで甲斐ルドルフが胸に手を当てて“微笑んで”王冠を受けようとする純真さに胸を打たれたのですが、実はMRでも同じように驚かされた場面があります。それは「♪Chandelier」幻影のサティーンを見つけた甲斐クリスチャンが、微笑んでいること。夢でも幻でも会えたら嬉しい!とばかりに追いかける様子が、望海サティーンの妖艶さを際立たせていました。
  • 一方で、「♪Crazy Rolling」での絶望→激昂のコントラストも素晴らしく、思い込みの激しい男が逆上する(誤解を恐れずに言えば「俺をコケにしやがって」的な)恐ろしさに肝が冷える思いでした。原作映画ではユアン・マクレガー演じるクリスチャンがステージ上でサティーンに札束を浴びせるという貶め方をしますが、それを思い出させました。全体的にユアンを彷彿させる甘やかさもあって、心身にぴったりと馴染んだ素敵なクリスチャンだったと思います!

 

クリスチャン:井上芳雄〜徹頭徹尾、愛の体現者であること
  • 甲斐クリスチャンを見たことで、芳雄さんのアプローチってむしろちょっと異質なのかもという腹落ちに至りました。44歳にして初々しく溌剌としたクリスチャンを演じられる技量は言わずもがなとして、結局のところ、オール・ニード・イズ・ラブ!!!ですべてを飲み込んでしまう大きすぎる愛で舞台ごと抱きしめるアプローチだったのではないか思いました。そんな芳雄クリスチャンの好きだったポイントを悔いの残らないよう全部書き残しておきます。
  • まず私は「♪Welcome To The Moulin Rouge」ボヘミアンズパート、「Burning Down The House」部分のダンスが刺さりすぎていまして、オペラグラスにかじりついて歯を食いしばって涙を流しながら見ています(怖いわ)。上方を見上げながら「♪ばーにんっ👏♪ばーにんっ👏」でステップを踏んで前に出てくるところ、何度でも見たいです。
  • 「♪Truth Beauty Freedom Love」ロートレックサンティアゴのハーモニーに「♪Royals」から飛び込むところ、火の輪くぐりみたいな正確さだし、そこからバタバタっと前に駆け出してきて体勢が安定しないだろうに「♪Tonight, We are young」をこれまた正確に、全身を楽器にして歌い上げる。シンプルに、なんでそんなことができるんです?
  • ティーンと出会ってロートレックサンティアゴ相手に大興奮するオタク仕草が大好き。7/6夜では口を押さえて足をジタバタさせていて、8/24昼は頭をかかえて突っ伏し、8/24夜は自分の太ももをバシバシぶっ叩く音がマイクに乗ってました😂
  • 「♪Your Song」でサティーンが入ってくるところ、「♪自慢していいんだよ」でハモリにスライドして声量を落としてサティーンの歌声を迎え入れながら、毎回とても新鮮に驚きの表情を浮かべていて、こういうギミックもミュージカルならではで、素敵だなぁと思いました。
  • 「♪So Exciting!(The Pitch Song)」で大好きなのは、カルメンのハバネラにのせての「♪お買い上げっ」で、明らかに声楽科ムーブかましているところです!声の張り方と響かせ方がクラシック寄りで、学歴を考えれば当然かもしれませんが、その引き出しの使い方に脱帽しました。
  • みんなでグルグル回るところ、8/24昼もぴょんぴょんしてたけど8/24夜はほとんどバレエのグランジュテだったので爆笑しました*5*6
  • 「♪Nature Boy」では上野/上川ロートレックに合わせて声色を微調整していることに気づきました。
  • どちらのサティーンとも素晴らしいものを見せてくれた「♪Elephant Love Medley」。8/24昼、望海サティーンは冒頭から「好き」が隠せなくてちょっと笑っていてキュートすぎたし、8/24夜はあーやサティーンとお互いに瞳の奥を覗き込み、「次はどうする?」という会話が聴こえてきそうな自由なセッション*7。あと、お願いですから私に芳雄クリスチャンのダンスブレイクのGIFアニメをください。♪チャラッチャラッ! チャラッチャラッ! チャラッチャラッチャーー
  • 「♪Backstage Romance」では“歌わない芳雄”。歌声とダンスの渦のただなかにいて、陶然とサティーンを見つめる表情がひたすらにロマンチック。
  • 「♪Come what may」の他言語版としては韓国語とドイツ語版があるのですが、サビの「Come what may」部分に「愛してる」という意味の言葉をもってきているのは、どうやら日本語版だけのようでした。訳詞の妙が芳雄クリスチャンの愛を増幅させて、とても甘やかなナンバーに仕上がっていたと思います。両手をとって目だけで長椅子へエスコートする表情、サインの出し方。そこから暗転してゆくなかでゆったりと押し倒すお芝居の余韻…。何度見てもうっとりします。
  • 「♪Chandelier」アブサンをかっ食らって長椅子に沈み込む姿がエッ…セクシーでした!*8
  • 革ジャケットを着せられて以降、「♪Roxanne」からは首が前にガクッと落ちる芳雄クリスチャン*9。公演期間を通してもっとも表現が変わったと思われるのは「♪Crazy Rolling」で、8/24昼はB席だというのに気圧されて体がビクッとなりました。2階の奥までまったく減衰せずに届く歌声、どういう仕組みなのか不思議でなりません(芳雄エネルギー保存の法則
  • 序盤に比べると明らかに深い声を混ぜてきていたし、これ、生来の顔立ちも生きている気がするんですよね(トートのつり目のメイクを彷彿させる)。8/24夜に至っては闇堕ちしすぎてとうとう表情がアシンメトリーになっていました。狂気を通り越してもはや異形。
  • だから、泣きじゃくるような「僕を見て」のギャップに心が揺さぶられてしまうのです。
  • 命を終えたサティーンに静かに額を寄せたあと、改めてうつむいて肩を震わせるほどに涙するのは、仲間が囲んでくれるから。仲間との絆が、劇中を通して描かれてきたから。
  • 泣き濡れたままの「♪Finale(Come What May)」。サティーンは愛と芸術の力で肉体から解き放たれて永遠になったけれど、彼女は確かに生きていた。そのぬくもりを惜しむような涙声の歌は切なくて、観る者の心のほこりを洗い流すようような感動もありました。生の感情を歌い上げながら荘厳さもあり、これには聖歌隊の経験も生きているのかもと思いました。

 

その他プリンシパルキャスト(ひとことずつ!)

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※芳雄クリスチャンで字数を使い果たしました…

 

ジドラー:橋本さとし
  • 橋本ジドラーは、とにかくカッコいい!
  • 粋で愛嬌があって、圧倒的にちゃらんぽらんなのにキメるところはキメて、心を掴んで離さない。緩急のある所作の1つひとつに夢中になりました。ウインクはずるいよ!!私は完全に橋本ジドラーの虜でございます。
  • 最高の最高ッ!来年はぜったいに梅芸で一緒にカンカンします!

 

ジドラー:松村雄基
  • 松村ジドラーは、とにかく優しい!
  • 序盤にクリスチャンと「サティーン」と声を合わせるところ、橋本ジドラーは切なげにクリスチャンを見つめていますが、松村ジドラーは思い出を偲ぶかのように微笑んでいるのが印象的でした。
  • ちょっぴりお人好しで、たぶんだけど実は橋本ジドラーよりも経営がヤバそう😂
  • ピエールとのイチャイチャに愛があふれてて、目に入れても痛くないくらい可愛いんだと思います。

 

ロートレック:上野哲也
  • 7回の観劇中、最初と最後しか出会えなかった…!「♪Nature Boy」のさみしげな歌声に境遇や物語がじっくりと染み込んでいて好きでした。
  • 公爵との対決シーン、プロレタリアの人なんだという真実味があって、一層の緊張感を感じました。

 

ロートレック:上川一哉
  • 「♪ここで、おじゃま虫〜登場〜」が好きすぎる件(そこ?)
  • そして上川ロートレックといえばコレ、観客の心を震わす「僕のミューズ…!」
  • カテコで蓮華ニニの回の脚上げに乗っかるドヤ顔も大好き!

 

デューク:伊礼彼方
  • かっこよくて怖くて威圧感はんぱない。「♪何ッ様なのさァ〜〜!」に対して俺様だよッ!という黙らせ方ができるのがすごい(※俺様だよとは言ってない)。
  • ピッチソングの大騒ぎのあと、シルクハットから紙吹雪をはらはらと落とすときの間が絶妙。
  • カテコの爆踊りでハートを盗んでいくので、ずっと危険を感じています。こういう人には近づいたらいかん。

 

デューク:K
  • 振り返った瞬間、お金が大好きだってわかる!(←これ前にも書いたけど、なんでだろ?)
  • Kデュークは実はめちゃくちゃサティーンに執着していて、さらに自分がちっぽけな存在であることを心の中ではわかっていて、だからサティーンが裏ではクリスチャンと会っていて自分を愛してはいないことが本当に、本当に許せないのだと思います。こういう人は絶対に怒らせたらいかん。

 

サンティアゴ中井智彦中河内雅貴
  • ふたりとも声がデカくて歌がうますぎて最高でした。
  • ニニとの組み合わせで特に好きなのは、中井サンティアゴ&楓ニニの重たいぶつかり合いと、中河内サンティアゴ&蓮華ニニの緊張感のある対峙でした。
  • 「♪Backstage Romance」の後半、いよいよブチ上がる「uno! dos!  tres!」の掛け声が大好きです*10

 

ニニ:加賀楓
  • キュートでパワフル!ちゃんと自分の可愛さをわかってるニニで、だからサティーンにも嫉妬するってものです。でもお姉ちゃん(=サティーン)思いなんだよう😭
  • 「♪Backstage Romance」でネコ科の生き物のようにサンティアゴとにらみあう前傾姿勢に釘付け。セクシーなの?キュートなの?どっちもできるの!?(←いろいろと混ぜるな)
  • どこかいたいけな雰囲気があるゆえに、「♪Roxanne」で男たちの相手をする暗喩の振り付けを見ていると、クリスチャンばりに「♪やめてくれた〜のむから〜」ってつらい気持ちになる。
  • 妄想だけど楓ニニは焼肉が好き。好きなメニューは上カルビとハラミ。若くて胃腸も強いからモリモリ食べられる!

 

ニニ:藤森蓮華
  • ニニ・パット・アン・レール(脚上げニニ)の実写化!名は体を表しすぎているッ!
  • シャープな存在感をまとっていて、舞台にいると空気が引き締まる感じ。
  • カンカンに交じるところ、ピンクのスカートをさばき倒して天を突くような脚に目が飛び出そう。
  • 当然ながらアームスも美しくて、「♪Backstage Romance」で椅子に片膝を立てながら緊張の糸を切らさずに優美に下ろしてくる右腕をずっと見てしまう。
  • 妄想だけど蓮華ニニは焼鳥が好き。好きなメニューはセセリと砂肝。串をバラして取り分けるなんて無粋なことは絶対しない。

 

アンサンブル&スウィング(全員書けなくてごめんなさい)

別の回で書いてますがLady M'sも大好きです!!

加島茜
  • プレショーで上手側に登場するや、あられもないポーズをとりつつ、タバコをふかしながら客席をガン見してくる美貌のお姉様。私は上手XC列に座る前に心に決めたことがあって、それはプレショーで絶対に茜さんの視線を受け止める!!ということ。勇気をもって挑戦しました!目が合ってドキドキしたけど天にも召されるような気持ちでした💓
  • その後も可愛すぎてついつい目で追ってしまいます。セレブリティでサティーンに冷たい一瞥をくれるところも好き。

 

田口恵那
  • カンカンのおだんごウイッグが可愛い!あと、カテコの「♪傷ーつくーとわかってーてなーぜー」の「🫶→💔→😢」の動きと表情が可愛すぎませんか!?

 

ロビンソン春輝
  • 渋カッコいい男性陣の中でふわっと華やか、舞台にいるとめちゃくちゃ目が吸い寄せられてしまう。
  • 私が見た出演回(2回)でまったく違うことをしていて度肝を抜かれ(=違う枠で出演)、頭ではわかっていたけど、これがスウィングのお仕事…!と、ほんとうの意味で理解できた気がします。

 

 

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そういうわけで!

忘れたくなくて最後の最後に感想を残しておきました。キャストのみなさんがSNSなどでお互いへの愛とリスペクトを隠さない様子が大好きでした。来年の再演にめちゃくちゃ期待して筆を置きます。大阪に行くときはトレーラーにゾウさんと風車をのせて飾り付けてパレードしてほしいな。来年もぜったい、みんなでCAN CAN!!!

 

*11*12

 

 

*1:そして、この歌声に寄り添う桑原まこさんのピアノの慈愛よ…

*2:クリスチャンのときはとっても可愛いのに、2回目は腹を決めているのでほとんどドスが効いているくらいの「どうぞ」。8/24夜に私が最後に見た時なんて、1回目の「どうぞ」がほぼアニメ声でちょっと笑いを誘うくらいでした

*3:だって甲斐くんが上げていた「のぞかいコンビ」の写真が爆イケだったから…

*4:甲斐クリスチャンはリアリティがあるゆえに、観客としてクリスチャンに対する客観性が芽生えてしまった面もあります。私はサティーンと同年代だからさ、「サティーン、そいつ、やめといたほうがいいよ…!」的な気持ちになりました😂←甲斐くんのせいではなくクリスチャンのせいだよ!!

*5:その後、♪丘を〜越えて〜で見送るところでジドラーの後ろにぴったりくっついて四拍子で指揮を振ってて橋本ジドラーに「何やってんだ」と突っ込まれてた。笑

*6:あと、甲斐クリスチャンを見たことで「いっぱい練習した!😫」の手の動きは芳雄クリスチャンしかやってないことがわかって「おい」ってなった

*7:あーやのラブ大爆発が止まらなくなってて最後のキスはポーズ解除して左手を芳雄クリスチャンの首にまわしてた😂

*8:これはね今年のワンマンショーのMCでミッチーさんがすんでのところで言い換えたのを真似しています。笑

*9:ちなみに甲斐クリスチャンは首が横に傾くイメージ

*10:私はここから手拍子を始めるタイプです

*11:感想とは違うので注釈にしておきます!→S席サイドの見切れについては、ここまで奥行きを使う演出であるならば来年もう少し価格の割り振りに配慮してもらえるといいなぁと思います。私は7回の中で同じ列の上手と下手の端、具体的には「I列」の7番と51番に座っているのですが、最も端である隣の6番と52番は売止めで空席でした。それくらい端っこということなのですが、さすがに売り物にならないと判断された席の隣が17000円というのは少し悲しいなぁと思ってしまいます…。私が総合的にあまり不満を残していないのは、幸運にもA列とXC列を引き当てたり、B席でコスパよく楽しむこともできたからであって(それでも高いけど)、もしも端っこの1回しか見られないなら暴れていたかもしれません。再演には超期待しているし、席の配分がちょっと変わったら嬉しいな〜と思います。

*12:てか、そもそも私こんなにハマるはずじゃなくて、7回も観るなんて思ってなくて(決して多いほうではないけれど)、いくら使ってしまったのかは頑なに考えないようにしています。

「ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル」原作映画との比較〜クルチザンヌとしてのサティーン考

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表題のミュージカルにがっつりしっかりハマっておりまして、大昔に観た(はずの)原作映画をアマプラで観てみました。

ミュージカル映画をどのようにミュージカルにするか、ということにはとても興味があって、「雨に唄えば」もそれに注目して観たのですが、「ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル」の場合は、バズ・ラーマンを創造主に据えた上で、いったん全部ぶっ壊してゼロから作り直したんだ!ということがよくわかりました(このあたりはパンフレットからも読み取れます)。

(↓ここでも映画との比較をしています)

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「映画」という媒体では、実にいろんなことが可能です。空撮でパリの町を駆け抜けることも、狂乱のダンスホールを真上から眺めることもできる。舞台でそれを実現するのは不可能です。
ところが、制約の多い舞台には、映画にはない最強の強みがありました。それは観客に本当に「ムーラン・ルージュ」の客になってもらうこと。
原作のあの混沌とハイテンション、ひとことでいえばカメラがめっちゃグルグル回る感じを舞台で展開するために、ミュージカル化にあたっては徹底的に観客を没入させ(=イマーシブ)、ムーラン・ルージュを体験させるという手法をとったんだなと思いました。

 

初見の感想(7/6夜・井上芳雄ファンクラブ貸切公演)

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2回目(7/18夜)※1か月後のいま読み返すと、すでに表現やお芝居が変わったと感じるところがありますね*1

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技術論には詳しくないのでこのあたりでやめておきますが、映画とミュージカルの違いで一番興味深く感じた「サティーンの人物造形の違い」について、自分なりに考えてみたのでまとめたいと思います。

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日本初演のおふたり!どっちも大好き。

 

 

ティーンの「肩書き」の違い

ティーンの息を呑むような登場シーン(Sparkring Diamond)は、その強烈なスター性を印象づけますが、マッシュアップの中にはマリリン・モンローのDiamonds Are a Girl's Best Friendなどが使われており、セックスシンボルであることも強くアピールされています(たぶん)。これに関しては、映画もミュージカルもだいたい同じです。ところが、ティーンの肩書きは、映画とミュージカルでは表現が微妙に異なります

 

あらすじを見てみると、映画でのサティーンの肩書きは「スター」かつ「高級娼婦」と明示されています。さらに映画の冒頭で、ムーラン・ルージュという場所は「娼館」でもあるという説明がなされています。

大人気を誇るキャバレー「ムーラン・ルージュ」のスターで高級娼婦サティーンと、貧乏作家のクリスチャンは激しい恋に落ちる。

www.amazon.co.jp

 

一方で、ミュージカルでのサティーンの肩書きは、日本プロダクションの公式によれば「花形スター」となっています。

ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル 』は激しい恋に落ちたアメリカ人作家クリスチャンと、ナイトクラブ ムーラン・ルージュの花形スター、サティーンの物語。

www.tohostage.com

 

もちろん、少し歴史をひもとけばムーラン・ルージュという場所に“そういった機能”があり、サティーンが“そういう役割”も担っていることはわかります。これは別に知らなくても&調べなくても劇中でちゃんと汲むことができるようになっていて(そこがいい)、例えば「パリの売春婦のことは忘れて」「娼婦にはお似合いだ」といったセリフが登場しますし、「路上に戻るのは嫌」というセリフからは下の階級の街娼に身を落とすことが示唆されています。ムーラン・ルージュが潰れたら「売春宿」になるというセリフもあるし、ジドラーの「輝くダイヤモンドを見せろ」「人生最高のパフォーマンスをしろ」だって言葉通りに受け取っちゃいけないかもだし、あとはナンバーとしては「ロクサーヌ」が丸ごとそれを匂わせているし…枚挙に暇がありませんね。また、パンフレットに掲載されているサティーン役&クリスチャン役4人による座談会でも、はっきり「娼婦」という表現が使われていました(つまり世界観として共有されている)。

 

ティーンは、「クルチザンヌ」と呼ばれる存在だったと考えられます。ブロードウェイのいくつかのレビューには確かにcourtesanという言葉が見つかりました*2*3

公式(本国)にはあらすじのページがなくて(なんで!)確認できていないのですが、そこから飛べるコレ(なんだろう、パンフの一部?)には、オペラ「ラ・ボエーム」との関連を説明する文脈でcourtesanという単語は確認できました(the courtesan, Satine

一方で、“Satine, the most alluring, bright, & beautiful star entertainer of the Moulin Rouge”*4や、“Moulin Rouge star performer, Satine”*5などの表現で、単に「スター」であるという説明にとどまっている紹介ページも結構あります。

 

そんなわけで完全に調べがついたとはいえないのですが、ミュージカルにおいては、劇中でその“仕事”を示唆しつつも、ティーンの肩書きは若干マイルドに説明されたのだと理解しました。

 

*「高級娼婦」についての参考文献。鹿島は「高級娼婦というものの存在は、その訳語のせいか、どうも日本では正しく理解されていない。」と述べており、たしかに、ミュージカルのあらすじにこの4文字をぶつけると、サティーンの職業について意図したとおりに伝わらないリスクがあっただろうなとなんとなくわかりました。*6

*7

 

 

ティーンが公爵と「するかどうか」の違い

そのことを念頭にサティーンと公爵のかかわりに注目すると、興味深い違いに気づきます。それは、身も蓋もない言い方をすれば、作中でサティーンが公爵と「するかどうか」ということ。

象の部屋で逢引するシーン。映画でもミュージカルでも、サティーンは自分の仕事として公爵(と勘違いしてクリスチャン)をゴリゴリに誘惑します*8

展開が分かれるのは、So Exciting!の大騒ぎを終えてから。ミュージカルのサティーンは、鏡台の前でスイッチを切り替え、クリスチャンの時とはまったく違うトーン*9でノックに応え、“本物”の公爵を迎え入れます。そこからのSympaty For The Duke*10では、プロとしての心意気すら感じさせる態度で公爵と挑戦的に目を合わせ続け、ナンバーの最後には長椅子に押し倒されて終わります(=これは記号的に行為を暗示している)。サティーンはジドラーの願いを聞き入れた上で、ある程度は主体的に公爵を受け入れているといえるでしょう。つまり、ミュージカルのサティーンは、公爵と「する」

ところが、映画を見返してみるとこの描き方が全然違うことに驚きます。クリスチャンとの恋に夢中になったサティーンは公爵との「夕食」を断り続け、ついにはジドラーの命令のもと渋々「夕食」に赴きますが、クリスチャンへの想いを見破って激怒した公爵に襲われそうになり、その場を逃げ出してしまいます。つまり、映画のサティーンは、公爵と「しない」。

愛していないパトロンのお相手をすることくらい、本来のサティーンには造作もないことだったのかもしれません。でも「できなかった」とクリスチャンに泣きながら訴える映画版のサティーンは、それくらいクリスチャンを一途に愛していたし、ピュアな一面が強調されているといえます。

 

ティーンが「何を希求しているか」の違い

その公爵がサティーンに与えようとしていたものも、映画とミュージカルでは異なります。ミュージカルで、心ここにあらずのサティーンが公爵との待ち合わせに遅れるシーン(Only Girl In A Material World)。公爵は美しい邸宅を指差し、それがサティーンの持ち物になることを告げます*11。この会話の始まりを合図に、背後をゆったりと行き交うセレブリティに「乳母車を押す貴婦人」と「杖をついて歩く紳士」が登場しますが、これらの人物はライフステージの変化を想像させ、公爵が、長い人生における生活の安定を提供しようとしていることを示唆しています(※長い人生にならない運命はさておいても)。

ミュージカルのサティーンにとってムーラン・ルージュは守りたいホームであり、ジドラーや踊り子たちとは疑似家族的な愛情を育んでいます。それでも、年齢的な限界を自覚しており*12、永遠に今のポジションにはいられないこともわかっています。また、Come What Mayの前にクリスチャンに抱きしめられながらハッピーエンドを夢想する場面では「安全な場所」という言葉も口にします。

邸宅を眺めている時点では死期を悟りつつあるはずだし、そもそも欲しかったわけではないとしても、ひとまず、ティーンにとって大事なものは居場所であるという仮説を立てることにします。

では、映画のサティーンは何を欲していたか。これも見返してびっくりしたのですが、サティーンには「女優になる」という夢がありました*13ムーラン・ルージュでの生活にはとうに嫌気が差しており、「こんなところは出るのよ」とはっきり言っています。前述のようにミュージカルではジドラーとの絆やニニを始めとする踊り子たちとのシスターフッドが描かれますが、映画ではその要素はあまり感じられません。かろうじて日陰者どうしの連帯があるに過ぎず、ジドラーの愛情と葛藤は映画版では非常に複雑なものだったのですが、それもミュージカルではあえて超シンプルにしたのだと思います。

ティーンにとって新しいショーへの取り組みはステップアップのために必要で、公爵は女優としての新たな地位を約束してくれる存在でした(映画の公爵は嫌な奴だけどすごく気の毒でもあります😂めっちゃお金出したのに…)。映画のサティーンはミュージカルよりも不遇でありながら、女優になって活躍したいという自己実現を夢見ていたことは*14、なんとも切なく思えます。ジドラーがサティーンに向かって言う“You’re great actress, Satine.”というセリフはとても皮肉で悲しいものでした。

 

まとめ:変わらないのは“愛の物語”であること

以上について、なんとなく考えてみましたが、そこから映画とミュージカルにおけるサティーンの人物像を整理してみたいと思います。

映画におけるサティーン(ニコール・キッドマンは、夢を持ち上昇志向があり、純粋で孤独かつイノセントな面もある。だから、純愛にのめり込む様子がドラマチックに映る。

ミュージカルにおけるサティーン(日本初演:望海風斗&平原綾香は、スターとしての自覚をもつリーダーであり、葛藤を抱えながらも前を向くリアリスト。だから、若く無謀なクリスチャンに惹かれる大人の恋にドキドキする。

*15

 

ここまで書いて気づいたんですけど、あれ、これって年齢設定がそもそも微妙に違うんじゃないの?…って今、思いました。。*16

 

ともあれ、この違いは、ミュージカル化するにあたって、現代の観客が共感を寄せやすいように意図されたものかと思います。実際に私自身は、映画のサティーンよりもミュージカルのサティーンのほうに感情移入しやすく感じました。

それでも、サティーンが貫いた愛がもたらす感動は、映画でもミュージカルでも変わりません。クリスチャンの言うとおり、これは“愛の物語”。シンプルだけど強い普遍性があるからこそ、時代や国を超えて観客を惹きつけるのではないでしょうか。

 

 

以上、映画とミュージカルで一番「違う」と感じたサティーンを中心に考えてみました。もちろん、クリスチャンもけっこう違うのですけどね*17

映画を見返して、たくさん発見がありましたし、そのうえで、ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル」ってやっぱ最高!と思いました。

千秋楽の足音が近づいておりますが、私はあと1回マチソワして終わりです(号泣)。どうか無事に、最後まで駆け抜けられますように。念を送ります!!!*18

 

 

*1:芳雄クリスチャン(フランソワ)の「僕を見て」とか全然違う…!

*2:Review: 'Moulin Rouge! The Musical,' A Triumph And Jukebox Extravaganza : NPR

*3:Everything you need to know about 'Moulin Rouge! The Musical' on Broadway at the Al Hirschfeld Theatre | Official NY Theatre Guide

*4:MOULIN ROUGE! The Musical Synopsis and Story – Broadway in Cincinnati News

*5:Moulin Rouge (Musical) Plot & Characters | StageAgent

*6:参考文献2.『モンマルトル風俗辞典』(鹿島茂白水社モンマルトル風俗事典 - 白水社

*7:参考文献3.田代万里生さんのブログ→パリの本場ムーラン・ルージュ観劇・・・からの!帝国劇場『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』 | 田代万里生オフィシャルブログ「MARIO CAPRICCIO」今のムーランルージュの雰囲気がめちゃわかりやすかった!ダンサーさんのお衣装についての記述は、知らなかったので本当にびっくりした…。そもそも、劇中で使われているカルメンのハバネラのことを調べようとしてぶち当たったのがこの記事っていう。さすがまりまりさん

*8:美貌のニコール・キッドマンが嬌声を上げてのたうちまわるという物凄いギャグシーンに仕上がっている。望海サティーンとあーやサティーンのお色気攻撃、どっちもよきです!

*9:ここのあーやサティーンの「どうぞ」ドスの効き方が特に好き

*10:ここの公爵、自己紹介をすると言いながらぜんぜん名前を名乗らなくてカッコつけ続けてて好き

*11:前述の書籍『パリ、娼婦の街 シャン=ゼリゼ』(鹿島茂/KADOKAWA)では、シャン=ゼリゼの豪邸に住むという夢を持っていたラ・パイーヴァという高級娼婦が紹介されていました。1865年から10年がかりで完成させたそうなので劇中の時間ではすでに建っています。公爵が指さしたあたりのお隣とかにあったのかもしれないですね。

*12:望海サティーンがジドラーとの会話のあとに鏡を覗き込んでシミやシワ(※ないけど)を気にするような表情がいい(※ないけど)

*13:映画の黎明期と重なるのでここでは「ちゃんとした舞台女優」みたいな意味かなと思っている

*14:マズローの欲求階層説における最上位の欲求。逆にミュージカルのサティーンが大事にしていたものはその1つ下の「所属と愛の欲求」、あとはさらに下の「安全の欲求」なのかなという気もする

*15:ブロードウェイはもちろん観ていないから不明&2人のアプローチの差はここではおいておきます

*16:ウィキによれば、公開時のニコールキッドマンは34歳。初演時のカレン・オリヴォはワールドプレミア時点で41歳?のはず(その後すぐ誕生日)。中の人の年齢を考え出すと芳雄さんのところで脳がバグるので得策ではないのですが…!

*17:思ったとおり甲斐クリスチャンは原作のユアン・マクレガーに近しい雰囲気がありました!サティクリ全員やっと観れたのでまた別の記事でまとめたいです

*18:FCネタです